掲載日 : [2016-08-24] 照会数 : 4563
ヘイト本に異議「表現の自由」も…出版労連シンポ
「差別や憎しみを飯の種にしたくない」。ヘイト出版に異議を唱える出版人・出版業界の関係者が、あるべき表現の自由の問題を考えるシンポジウムをこのほど東京都内で開いた。5月にヘイトスピーチ対策法が成立したことから「あらためて議論の必要性が高まっている」として出版労連が主催。編集者やライターなど約100人が参加した。
「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」の岩下結さん(BLAR)は、マイノリティーの属性を攻撃対象とする「ヘイト本」の存在に「表現の自由」を対置させる思考からの脱却を訴えた。
「メデイアは『表現の自由』を享受するだけでいいのか。メディアとマイノリティーが対等の空間でお互いの言論をぶつかりあっているわけではない。マイノリティーは攻撃されても反論できず、沈黙を強いられるだけ。マイノリティーをおとしめることが目的であれば、メディアとしての中立性、公共性に疑問符がつく。表現の自由には一定の責任が伴う」
一方、弁護士の水口洋介さん(東京法律事務所)は、「表現の自由の規制には厳格な審査が必要」と述べ、規制の乱用には慎重な姿勢を見せた。
会場で取材していたジャーナリストの安田浩一さんは自らのレポート「ウェブマガジン」のなかで、「規制すべきか否か、といったことではなく、我々に社会を壊しているという自覚があるのか、そうした出版物をきちんと批判することができるのか。出版界の具体的な取り組みこそが、いま、求められているのだと思う」と述べた。
(2016.8.24 民団新聞)