掲載日 : [2023-06-07] 照会数 : 881
「旅立つ家族」東京で再演 日本統治下で国境超えた愛描く
[ 「旅立つ家族」の一場面 ]
劇団文化座が同劇団の代表作の一つ「旅立つ家族」(金義卿原作、金守珍・佐々木愛脚色)を東京で再演する。作品は韓国の国民的画家、李仲燮による日本統治下での国境を超えた愛と葛藤を描く。2014年に東京で初演されるや大きな反響を呼び起こし、地方での巡演を重ねてきた。久しぶりの凱旋公演となる。
仲燮は解放前、留学先の日本で山本方子と出会い、お互いに惹かれあう。帰国後、方子を呼び寄せ、1945年4月に結婚。方子は李南徳を名乗るようになる。2人の子どもにも恵まれ、愛する家族に囲まれて絵を描き続けるというつかの間の幸せをかみしめた。
しかし、つかのまの幸せは韓国戦争勃発で破られる。釜山を経由して済州島に避難。南徳は健康を害し、子どもたちを連れて日本へ。ひとり取り残された仲燮も貧困と孤独にさいなまされながら精神に異常をきたした末に56年9月、死去した。
原作は韓国演劇界の重鎮、金義卿。91年、李潤澤の演出のもと韓国で初演され、好評を博した。
当時は日本文化禁止の状態が続いていたため、国民感情に配慮して主人公の妻をあえて悪人として描いている。双方の両親も結婚そのものに反対したとしている。
いずれも事実と違うことは2人が交わした約200通を数える手紙などで明らかになっている。日本初演にあたって文化座の佐々木愛代表と共同で脚色し、演出にも加わった劇団梁山泊の金守珍代表が原作を大幅に手直しした。「文化座版」では方子のひたむきで一途な愛にも光があてられている。
27日から7月2日まで東京・東池袋のあうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センタ‐)で公演。問い合わせは劇団文化座(03・3828・2216)
(2023.6.7民団新聞)