掲載日 : [2022-02-02] 照会数 : 3391
【新刊紹介】『ヤクザの家族』 小説「韓日比較文化論」
韓国から特派員として来日した若い女性の異文化体験をユーモラスな「小説」仕立てで描いた。著者、王秀英さん独自の「韓日比較文化論」が随所で展開される。
知人の葬式に参列しての帰り。あまりの暑さに耐えかね、駅のホームにへたりこんだ主人公は思わず小さいビニール袋に入った清めの塩をなめてみた。すると、汗が引いて体もスッキリ。周囲からは「縁起でもない」とひんしゅくを買う。はじめて塩の正体を知った主人公が啖呵を切った。
「清めたわよ! しっかり! 内臓まで!」。「わたくしの目が青いか、皮膚が黒かったら塩をなめている私を指さしながらざわついたりしなかったと思う」。
来客から「キムさん、トイレを貸して」といわれた主人公いわく「貸してあげるけど、いつ返してくれるの? トイレなんか韓国では貸してとはいわないわよ。みみっちい日本人!」。
王さんは延世大学校卒業後、詩人として文壇デビュー。1977年には韓国の女性雑誌の駐日特派員として来日した経験を持つ。「小説」とはいえ、自身の実体験をもとにしたようだ。
来日して間もなく受けた入居差別の洗礼、家の前にごみを捨てられるといったいわれなき嫌がらせも身を持って体験してきた。こうしたことから在日同胞の事情に目覚め、驚いたり、憤慨したり。1100円、販売元は企画ユニナ。TEL・FAX042・499・2144。