掲載日 : [2021-12-22] 照会数 : 11777
〝柳の木通り〟リニューアルへ…「新ボトナム会」始動
[ 代表の川崎栄子さん(左) ]
北送の事実を記憶し、人権尊重の精神育む
【新潟】1959年12月14日に新潟港からの第1次北送船に乗船した同胞らが新潟市内に植栽した柳が並ぶ「ボトナム(柳の木)通り」のリニューアルプロジェクトが動き出した。記念植樹から62年が経過したいま、当時の300本余りの柳の木は多くが枯れ果て、いまや見る影もない。プロジェクトでは柳の木をよみがえらせることで北送の事実を記憶し、人権尊重の精神を育む場所としていく。
プロジェクトの当面の目標は無残にも枯れはてた柳の木の植え替え。さらに中・長期的には北送の悲劇から人権の大切さを考える資料館の建設と、北送者9万3000人の名前を記した碑の建立を目指している。
新ボトナム会が13日、新潟市内で開催した整備プロジェクト発足式フォーラムで発表した。会の代表は元在日同胞脱北者の川崎栄子さん(79)が務めている。
川崎代表は2019年の北送60年追悼式典で新潟市を訪れたとき、「ボトナム通り」を歩いてみた。風にそよそよ揺らいでいたかつての風情はどこへやら、「82本がぽつり、ぽつり。すたれるにまかせ、とても並木とはいえない。なのに、植え替えに関心を持つ人もいなかった」。このとき、北送者の自由と人権を侵害した「負の遺産」として残すべきだと川崎代表は心に誓った。
新たな植栽は行政の理解と後押しを得たうえで、来春からの実施を予定している。プロジェクトに期待する法政大学国際文化学部の高柳俊男教授は「東京から苗木を運んでこと足れりではない。現地の人々による機運の盛り上がりがポイントになる」と東京からビデオメッセージを寄せた。
植栽事業と同時に、北韓による人権被害を記録として残し、2度と繰り返さないように記憶として伝えていく「資料館」と、北送9万3000人の名前を刻んだ沖縄のひめゆりの塔をイメージした碑の建立も目標としている。資料館はスペースの半分を日本人拉致、残り半分を北送被害にあてる。
元在日の脱北者で、現在は新ボトナム会の副代表を担う石川学さんは「北送も拉致もだまして連れていった点では同じ。別に考えてはならない」という。川崎代表は「日本で平和といえば広島、自由・人権の拠点といえば新潟とみんなが思い浮かべられるような観光資源にしていきたい」と話している。
新ボトナム会ではプロジェクトへの寄付金を募っている。振込口座はゆうちょ銀行。記号・11330、番号・00177341、名義・シンボトナムカイ。ゆうちょ銀行以外の金融機関からは店名・一三八(イチサンハチ)、種目・普通、口座番号・0017734
「ボトナム通り」
北韓こそ「地上の楽園」という甘言を信じた新潟県内の北送者が中心となって1959年12月14日の第1次船乗船を前に同年11月6日から7日までの2日間、新潟市中央区東港線道路の約1・5㌔強の区間に柳の木306本を植栽して県に寄贈した。「住み慣れた日本へ絆の証を」と費用の40万円(当時)はみんなで出し合った。この街路樹は地元で通称「ボトナム(柳の木)通り」と呼ばれている。この多くが折られたり、枯れたりして残るのは80本ほどとされる。
(2021.12.22 民団新聞)