中退者支援 韓国史の守り手
育児所設置 シニア職場拡大
検定資格者優先
自己利益のみをがむしゃらに追求する印象をもたれがちな韓国企業。だが、独自のジャンルで公益性を体現しようとする企業も増えている。
化粧品研究開発企業「韓国コルマー」の今年の新入社員採用試験志願者は約9400人で、競争率は約80倍と高い。うち3分の1が韓国史能力検定試験の資格を保有している。同社が10年前から、韓国史資格保有者に加算点を与える独特の採用制度を導入したためだ。
今年1月、難関を突破して入社した李ウンソルさん(26、女性)は「就活のために韓国史試験を受けたが、忘れていた自国の歴史を改めて確認する機会になった」と語っている。
約1000人の役職員は自社を「韓国史の番人」と呼んでいる。同社は2013年6月に誠信女子大の徐敬徳客員教授とともに「韓国史番人100万大軍プロジェクト」をスタート、約80日で11万人以上の署名を集めた。
尹東漢会長は「企業が製品とサービスを生産するのは、より良い未来をつくるため」とし「親に感謝の気持ちを抱くのと同じように、歴史を知ることは当然の責務」と自負する。
植樹5千万本も
同社の社会貢献がオーナーの経営哲学から始まったのなら、財団を設立して社会貢献を展開している企業もある。
故柳一韓博士が設立した柳韓財団は奨学事業などを行っている。また、同財団が大株主である柳韓キンバリーは「我々の山河を緑に」キャンペーンを進め、31年間にわたって5000万本の苗木を植えた。
最近は高齢化社会問題を解決するため「シニア職場」の創出に取り組んでいる。高齢者を採用する小企業と社会的企業に積極的に投資し、ここで作られた製品の販路開拓も支援している。
三星生命は少子化問題の解決に対応している。13年から地方自治体と住民が共同設置した育児施設22カ所をリフォームしたほか、玩具・図書を支援している。特に0〜3歳乳幼児がいる家庭のために育児相談と教育を支援する「3歳村事業」を5年間続けている。
ポスコ(浦項製鉄)は企業と地域がともに成長した代表的な事例だ。1968年の設立後、故朴泰俊会長の哲学に基づき、13の幼稚園・小中学校・高校とポステック(浦項工科大学)を設立するなど、地域住民の教育と福祉に力を注いだ。
社会的企業を養成し、企業市民の役割を果たしている会社もある。08年に設立された「ソプン(sopoong)」は創意に満ちたアイデアで社会問題の解決に率先するソーシャルベンチャーを支援する投資会社だ。
学校中退者を採用してレストランを運営する「カフェスロビー」、コーヒーのかすでヒラタケを栽培する「コマ農夫」、エコファッションを作る「オルグドット」などに投資して成長をサポートしている。ソプンでは投資金の回収よりも該当企業の社会的価値の実現を重要視している。
このように、韓国国内にも厳しい環境を乗り越えて公共問題の解決に取り組む企業市民が存在するものの、社会的な土壌が弱いと指摘されている。
参加条件緩和を
公益財団の企業株所有が5%に制限されているため、柳韓財団のような公益事業をしたくてもできない企業家が多い。
07年に制定された社会的企業育成法も弊害になっている。同法の支援制度を受けるには、利潤の3分の2以上の公益使用が条件となるため、中小企業では3分の2を使う余力がなく、事実上支援を断念せざるを得ないからだ。参加条件の緩和が急がれる。
(2015.6.10 民団新聞)