掲載日 : [2009-06-03] 照会数 : 9192
2025年アジアの「中心都市」は韓国
[ ジャック・アタリ著『21世紀の歴史』(2520円、林昌宏訳) 作品社(℡03・3262・9753)。 ] [ ジャック・アタリ氏 ]
ジャック・アタリ氏の『21世紀の歴史』
活力 世界を魅了…ネックは北の脅威
欧州でベストセラーとなった『21世紀の歴史』(ジャック・アタリ著)が最近、日本でも話題を集めている。それぞれの時代に出現した「中心都市」という視点から歴史を検証し、今後の100年間を予測した。2025年にアジアの中心都市となるのは韓国だと評価する。
ジャック・アタリ氏(経済学者・思想家・作家)は38歳にしてミッテラン大統領の特別補佐官を務め、ヨーロッパ復興開発銀行の初代総裁を歴任した。サルコジ大統領が設置した「アタリ政策委員会」で戦略提言を行うなど、今なお政権に強い影響力を持つ。
これまでも、ソ連崩壊、金融バブル、新たなテロの脅威、インターネットによる世界変化を予測し、見事に的中させてきただけに、『21世紀の歴史』が発行されるや、内外から注目を浴びた。
日本語版(作品社)は昨年8月の発売以来、版を重ねてきたが、先月初め、NHK総合テレビでアタリ氏の緊急インタビューが放映されるや、書店での品切れが続出するほどの売れ行きとなり、5月25日に7版目が出された。
『21世紀の歴史』の主な内容を見てみよう。
その時々の市場状況や産業の発達状態によって、中心都市は常に移り変わる。ブルージュやヴェネチア、ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルスなど9つの中心都市の変遷をたどりながら、歴史の一定法則を見いだしていく。
この「歴史の法則」をもとに、後半で未来を予言する。▽〞超帝国〟の出現▽〞超紛争〟の発生▽〞超民主主義〟の出現など、21世紀世界を襲う3つの波を予測した。
中心都市は東から西へと移動し、大西洋を越えて欧州から米国に渡り、今後は太平洋を越えてアジアの都市が中心となる。
東京が中心都市となる可能性はあったが、日本はそのチャンスを逃した。その最大の理由が、「開放精神の欠如」だ。21世紀日本の課題として、▽東アジア地域に調和を重視した環境を作り出すこと▽日本国内に共同体意識を呼び起こすことなど10項目を指摘した。
今後、経済的政治的勢力をもつ地域として、韓国、日本、中国、インド、ロシア、インドネシア、オーストラリア、カナダ、南アフリカ、ブラジル、メキシコの11カ国をあげている。
アジアが台頭し、20数年後には、アジア地域での生産が世界の半分以上になる。中でも、アジア最大の勢力となるのは韓国であり、韓国の1人当たりGDPは2025年までに2倍になると予測する。
韓国は、新たな経済的・文化的モデルとなり、その卓越したテクノロジーと文化的ダイナミズムによって世界を魅了する。
中国、マレーシア、インドネシア、フィリピン、さらには日本でさえ、韓国モデルを「成功するためのモデル」として、こぞって模倣するようになる。
ただし、韓国の成功の永続性は、次に掲げる北の2つの破滅的なシナリオを避け、独自の路線を切り開く能力があるかどうかにかかっている、と警告する。
一つは、北朝鮮の独裁政権の崩壊によって南北の統一を余儀なくされるというシナリオ。この場合、経済的なコストは甚大だ。
いま一つは、北側が仕掛ける破れかぶれの軍拡競争が、韓国の半世紀にわたる奇跡の経済成長を無に帰すというシナリオだ。
(2009.6.3 民団新聞)