掲載日 : [2016-01-15] 照会数 : 4924
<朴槿恵大統領>危機克服へ政治文化の一新緊要…国民向け談話

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許されぬ北の核実験
強い制裁独自でも…テロ防止法の成立早急に
尊敬する国民の皆さん。
いつものように1年が始まり、新たな決意と覚悟をしましたが、新年早々、北韓が奇襲的に4回目の核実験を強行し、先週金曜日に閉幕した臨時国会では選挙区さえ決められないという、前代未聞の事態が発生しました。また、国の経済と国民の安全に必要な核心法案が一件も処理されませんでした。
安保と経済は国家を支える2つの柱であり、私たちは今、この2本柱が同時に危機を迎えるという緊急事態に直面しているのです。
今回の北韓の核実験は、私たちの安全保障に対する重大な挑発であり、私たちの民族の生存と未来への深刻な脅威です。東北アジアはもちろん、全世界の平和と安全を脅かす容認できない挑発でもあります。
この核実験は今後、韓半島はもちろん、東北アジアの安全保障地形に重大な変化をもたらし、北韓の核問題の性格を根本的に変える可能性があります。したがって、今回の北韓の核実験に対する国際社会の対応は以前とは自ずと変わらねばなりません。
対北拡声器放送確実かつ効果的
現在、政府は北韓の核実験に対する1次的な対応として、8日から対北拡声器放送を再開しました。昨年8月、DMZでの北韓の地雷挑発に対して対北拡声器放送を開始した際、一部では無意味だとの批判もありました。政府の方針を信頼しないこのような考えは、南北関係をさらに困難にさせました。
しかし、政府は揺るぎなく継続しました。以来、「8・25合意」を導出し、南北当局会談、離散家族再会などを導き出したように、これは北韓に対して最も確実かつ効果的な心理作戦です。全体主義体制に対する最も強力な脅威は、真実の力です。
今後政府は、わが国民の安全を徹底的に守り、北韓の住民に真実を知らせる努力を続けます。これと並行して政府は、国連安保理の場だけでなく、二者間と多国間レベルで北韓に打撃を与える実効的な制裁措置をとるべく米国など友好国と緊密に協力していきます。
これまで韓米両国は、北韓の追加核実験に備え、新たな安保理決議案に含める要素について意見を調整してきました。北韓の態度変化をもたらす新たな内容を含めた最強の対北韓制裁決議案が導き出されるよう、全ての外交力を尽くしていきます。
この過程では中国の役割が重要です。中国はこれまで連続して北韓核不要の意志を公言してきました。その強い意志が実際に必要な措置に連結されない場合、今後5回目、6回目の追加核実験も防げず、韓半島の真の平和と安定も担保されないという点を中国もよく知っているはずです。
安保理決議には中国の役割期待
困難を迎えたとき、手を差し出してくれるのが最上のパートナーです。今後、中国が安保理常任理事国として必要な役割を果たしてくれることを信じています。
国民の皆さん。今回の北韓の核実験で国民の安保への不安が募ることでしょう。これと関連し、まず私たちは同盟国である米国と協調して国の防衛に一寸の誤差もないよう、徹底した軍事態勢を整えています。
さる7日、韓米首脳間の電話会談で、米国の韓国に対する防衛公約が実践されることを確認しました。B‐52戦略爆撃機の展開は韓国防衛への決然とした意志の表れでした。
今回の核実験を通じて再確認された北韓政権の欺瞞的で無謀な行動を考えると、北韓の追加挑発の可能性は常にあります。韓米両国は米国の戦略資産の追加展開と、拡張抑止力を含む連合防衛力強化を通じて北韓の挑発意志自体を無力化させていきます。
国民の皆さん。このように安保の危機状況が深刻でもわが国はまだ、国内外のテロと挑発を防ぐしっかりした法的措置を備えられずにいます。
今後も北韓は、南北間の高まった緊張を悪用し、社会的混乱を引き起こす挑発やサイバーテロをいつでも試みる恐れがあります。ISILのような国際テロ組織も、このような混乱に乗じて国内外からつねにわが国民を狙う可能性があります。
これら北韓の後方テロと国際テロ組織の脅威に備えるため、「テロ防止法」の制定が必要です。テロ防止法が存在しない場合、国際テロ防止に不可欠な国家間の協力も難しく、先進情報機関との反テロ協力もできません。
現在OECD、G20加盟国でテロ防止法を制定していない国は韓国を含む4カ国にすぎません。これは国民の安否を危険の中に放置しているも同然です。ぜひとも国会は、遅ればせながらも国民の生命保護と国家安全のため、テロ防止法を早急に処理するようお願いいたします。
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構造改革に高い評価
痛みに耐え完遂を…大国に互して、飛翔の道へ
現政府の発足当時、私たちは新たな経済パラダイムへの転換を求められるほど、国内外で多くの課題に直面していました。政府は、これらの課題を克服するため、「経済革新3カ年計画」と「4大改革」を推進し、この革新への努力は世界から注目と評価を受けています。
2014年にIMFとOECDは、「経済革新3カ年計画」を基にした私たちの成長戦略をG20諸国の中で最高だと評価しました。このような評価は何よりも、これまでの非効率的な労働市場と放漫な公共部門を正そうとする私たちの構造改革努力を認めたからです。
成果示し始めた「創造経済」政策
また、17の創造経済イノベーションセンターを通じて成果を示し始めた創造経済と、持続的に推進してきた規制改革が新たな成長の動力を生み出すと評価したのです。そして、積極的な経済外交で中国など主要国とFTAを結び、私たちの経済エリアを全世界の4分の3に拡大したことも高く評価されたのです。
昨年は、国際信用評価機関であるムーディーズが建国以来、最も高い信用格付けである「Aa2」と評価しました。ムーディーズは、わが国の成長率が先進国よりも高く、国家債務比率は先進国に比べて低く、短期外債の割合も過去50%から30%に減少したことに注目し、何よりも政府が心血を注いで推進している公共、労働、金融、教育など4大改革に着手したことを高く評価しました。
しかし、このような評価の半面、警告も私たちに送られました。現在推進中の構造改革が後退するか失敗した場合、わが国の信用格付けは大幅に低下し、もう一段階の跳躍を控えている経済が後退することもありえます。
昨年のG20首脳会議では各国の成長戦略実施を点検・評価したところ、韓国は2位にとどまりました。これは規制費用総量制導入などに向けた関連法改正が国会で遅延されたためです。もし速やかに法改正されていたら、わが国の成長戦略は計画だけでなく、履行確認でも1位を占めたはずです。
国の成長と発展は政府や大統領の意志だけでは成し遂げられません。このような状況が続けば、私たちは墜落するしかありません。ムーディーズが警告しているのも、まさに構造改革をどのように推進していくかということです。
「経済革新3カ年計画」と「4大改革」は滞りなく推進する必要があります。私たちは過去、IMF事態という苦痛を経験しました。当時も、事前に徹底的に備えておけば防ぐことができましたが、残念ながらそのような十分な準備をしていませんでした。
先制的改革こそ危機回避の前提
今、多くの専門家がわが国が先制的な改革をしなければ、97年のIMF危機当時に経験した大量失業と莫大な社会経済的費用を再び招くと警告しています。明らかに危機が見えはじめており、あらかじめ備えず大量失業後に危機がきたと後悔するなら、それほど愚かなことはありません。
最初は痛みを伴い大変であっても、わが国の経済の傷が深くなる前に先制的な構造改革を通じ経済体質を強固にし、新たな素材を発見する必要があります。
すでに中国、日本、米国などのグローバル企業は、低成長のトンネルを脱出するため、積極的な事業再編を通じた専門化、大型化、高付加価値化を推進しています。
このように世界各国は国家生存と競争力強化へ渾身の力を尽くしており、このような絶体絶命の時にわが国だけ遅れることはできません。
私が何度も繰り返して労働改革法と経済活性化法が必ず第19代国会を通過するようアピールするのも、このような切迫した心情からであり、それがわが国の経済を30年、50年耐えられる堅固な岩盤にのせる重要な足がかりだからです。
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目に余る国会の反目
法案放置 限度超す…「労使政合意」具体化急ごう
尊敬する国民の皆さん。
昨年、17年ぶりに歴史的な労使政妥結で若者たちに希望を与えました。国際労働機関の関係者も私たちの大妥結を重要な模範ベストプラクティスと賛辞を送りました。
改革の中でも、労働問題は一刻を急ぐ切迫した課題です。今、青年たちが「雇用非常事態」に置かれているからです。そのような状況で労働界は、労働改革が「改悪」だと非難し労働改革自体を受け入れていません。
現在、求職している青年たちは35万人に達し、就職をあきらめた青年を含めると100万人を超えています。この状況で、今年から定年が60歳に延長され、青年たちの雇用に警告音が鳴りつづいています。
政府は昨年、全313の公共機関が賃金ピーク制の導入を完了し、今年は総計4400人余りの青年雇用が新たに創出され、大企業30社の主要子会社の66%が賃金ピーク制を導入し、世代間の共生雇用システムをつくっています。
失業給付金の引き上げ(50%から60%に)と支給期間の拡大(+30日)、雇用支援プログラムの積極的拡大、雇用福祉プラスセンターの拡充をはじめ、政府は労働改革の約束を履行するため、最善を尽くしてきました。
ところが、歴史的な労使政大妥結の成果も雇用を求める青年たちの切実な声や経済回復の火花を生かそうという国民の切々たる訴えも、政争の中に埋もれてしまいました。国会に足止めされている労働基準法、雇用保険法、労災保険法、期間制法、派遣法の改正案には、これら雇用創出と社会安全網強化への改善策が盛り込まれています。
労使政大妥結は雇用危機を克服するため労使政の「苦痛分担実践宣言」であり、国民との約束です。その国民との約束は破棄することはできません。問題がある場合、対話と妥協で解決すべきです。
過去、わが国が貧しく困難な時、遠く西ドイツの地下1000㍍の炭鉱で勝ち抜いた鉱夫たちの血と汗と、派独看護師の献身が今日の国家経済を生かす土台となりました。また、灼熱の中東建設現場で労働者たちが見せた勤勉さは今日の信頼につながっています。
過去、わが国の先輩たちが犠牲を覚悟し祖国と家族のために見せた愛国心を今、私たちが少しでも分け合い、この国を危機から救えるようご協力をお願い申し上げます。その道は持っている既得権を互いに少しずつ減らすことです。
尊敬する国民の皆さん。
最近、中国の株式市場が相次いで暴落し、グローバル経済環境の不確実性がさらに高まっています。世界経済の変化の中で、わが国の経済が再跳躍するためには、構造改革とともに質の高い雇用が見込めるサービス産業を発展させ、創造経済を活用した新産業も開拓すべきです。
サービス産業の発展が飛躍の力
特に、サービス産業は雇用創出効果が製造業の2倍であり、医療・観光・金融など、青年が希望する質の高い雇用が多く、わが国の経済の再跳躍へ大きな力となるでしょう。
こうした状況にありながら、最大69万人を雇用創出できるサービス産業の発展基本法は、なんと1474日間も国会で足どめになっている状況です。企業活力向上特別法も企業の先制的事業再編を通じて質の高い雇用を創出する法ですが、未だ可決されずにいます。
このまま対応が遅れると、わが国の経済は成長の勢いを永遠に失ってしまうかもしれません。このような悪夢が現実化されることを恐れ、大多数の国民が法案処理を切願していると思います。
昨年12月から、商工会議所、中小企業中央会などの経済7団体と24業種の団体が国会を訪問し、早急な立法を促した経緯があります。大・中小企業、経済団体が声をそろえて法案通過を促す声明を出したことは初めてのことでした。それほど、わが国の企業は今、切迫しているのです。
昨年7月、関連法が可決され、準備中のクラウドファンディングも200種以上の会社と、新事業のアイデアが1月25日の施行と同時にクラウドファンディングを介して資金募集に備えていることを知っています。
雇用創出の機会失えば打撃深刻
ひとつの法案通過によって、今後3年間で約1180以上の企業が2714億ウォンほどをクラウドファンディングを通して調達されると見られています。
これら、国会での法案通過後直ちに発生する効果を見ると、経済活性化法案の速やかな国会通過がいかに重要で切実であるかを再認識します。通過しなかった時間の損失もまた国民の痛みとなっています。
今や、わが国の経済の火種を生かすことができるゴールデンタイムが残りわずかとなっています。仕事をしたい国民のために、そして大企業と中小企業が差し迫ってアピールする経済の活性化法、労働改革4法を1月の国会で必ず処理していただく必要があります。
国民の皆さん。今、韓半島は一触即発の危機にあります。政治は国民のためにあらねばならないのに、北韓の核実験強行で韓半島に緊張感が高まっている時に、当事者である大韓民国の政界は互いに一寸の譲歩もなく反目を重ねている状況です。政治が国民のための仕事に取り組み、危機を迎えている大韓民国のためにすべての政争をやめ力を合わせなくてはなりません。
国民の皆さんに、このような政治文化をつくっていただく必要があります。国民の皆さんが一致団結すれば、私たちに課せられた険しいチャレンジも乗りこえられます。
みんなが力を合わせ変化と希望の大韓民国をつくっていきましょう。ありがとうございました。
(2016.1.15 民団新聞)