法律相談Q&A

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法律相談Q&A 内容

掲載日 : [22-09-29]   照会数 : 708

財産相続と民事信託…安心して家族に財産管理

Q

 父は母と一緒に繁華街にある自己所有の土地建物で駐車場付きの飲食店を経営していましたが、10年前に母が亡くなったことで店を続けることができなくなりました。

 私たち2人兄弟も継がなかったことで、父は古くから働いていた料理長夫婦にお店を貸し、その家賃で隠居生活し、今年で80歳になります。

 その父が二男である弟には、医者になるまで学費などの援助をしてきたから、親と同居して夫婦で母親の介護もしてきた私に、飲食店の土地建物を相続させる遺言を書くから、老後もしっかり面倒看てくれと言うようになりました。

 ただ、この10年で地価が大幅高騰し、相続税評価額の基準となる路線価も倍になり、これから先も地価は上がりそうです。そのため、相続では税金を払うために土地建物を売却しなければならないかもしれません。

 最近、知り合いの不動産業者から「節税対策のために賃貸ビルに建て替えては」と勧められおり、父に相談しようと考えています。何かアドバイスがあれば教えてください。
 

A

当事者間で財産管理処分の契約を

◆弁護士
 お父さんは、認知症など判断能力に影響する問題を抱えていますか?

◇相談者
 いいえ、最近、物忘れがすることを気にし始めましたが、大丈夫です。

◆弁護士
 飲食店の家賃はいくらですか?

◇相談者
 200坪の土地に平家店舗60坪とお客様用駐車場で月80万円です。不動産業者の話では、7億円かけて10階の賃貸ビルに建て替えたら、月800万円の家賃収入が見込めるそうです。

◆弁護士
 相続税の節税効果について、税理士に相談しましたか?

◇相談者
 父に内緒で税理士と銀行に相談しました。税理士に試算してもらうと、父の存名中に建て替えした方が家賃収入増の所得税の増加を見越しても相続税の節税効果があるとアドバスしてもらいました。

 しかし、銀行からは、土地が5億円以上の価値があっても、飲食店の月80万円の家賃収入の返済能力だけでは、土地建物を担保にして1億円までしか融資できず、相続税はそれ以上になるので、土地建物を物納するか売却するしかないそうです。

 もし、賃貸ビルにして家賃収入が月800万円になればビル建築資金7億円だけでなく、完成したビルと土地で追加で納税資金3億円、合計10億円までは融資できると言われました。

◆弁護士
 建て替えの前提として、飲食店の明け渡しが必要になりますが、これまで何か交渉してきましたか?

◇相談者
 これまでに明け渡しを求めたことはありません。ただ、4~5年前に父が弁護士に依頼して、家賃の値上げを交渉してもらったことがあります。そのときは、父としても店の看板を守るために料理長にお願いする形で継いでもらった経緯があったため、値上げを断念しました。

◆弁護士
 明け渡しの話を切り出すには、まず、お父様にお店の看板への愛着や料理長との師弟関係よりも、相続対策の方が大事だと分かってもらう必要があります。何より、80歳のお父様には健康で長生きしてもらうことが一番ですが、万が一、認知症などを患い、判断能力がなくなることも想定した老後の財産管理と生計の維持が大切です。

 お父様の財産管理や生計維持と将来のあなたの相続対策を両立させるためのアドバイスが必要ですね。

 医師の弟さんはこの件について何か知っていますか?

◇相談者
 私から簡単ですが話をしています。私から伝えなくても父から弟に話をするでしょうし、たぶん弟は父が決めたことならそれでいいというでしょう。近ごろ、全財産を長男が相続するのはどうかなという感じは見受けられますが、父の老後を私たち夫婦がきちんと看ていれば文句は言わないはずです。

◆弁護士
 そうすると問題となるのは、お父様の生前の財産管理にあたり、成年後見が必要になるかどうか、亡くなった後の相続では弟さんから寄与分の主張がされるかどうかですね。

 まず、成年後見についてですが、お父様が認知症になって成年後見人を付けることになると、あなたが後見人に選ばれても家庭裁判所の監督を受けることから、飲食店の明渡やビルの建て替え計画の実行がスムーズにいくとは限りません。

 第三者の弁護士や司法書士といった資格者が後見人に選任された場合も同様です。

 次の弟さんの寄与分については、これからお話しする民事信託をするかしないかで、ほとんど違いはないので、別の機会にしましょう。

◇相談者
 民事信託とはなんでしょうか。

◆弁護士
 お父様が判断能力のあるうちに、長男のあなたに財産の管理処分を任せることをお二人の間で契約という形で約束することです。

 今回のご相談の場合ですと、お父様を「委託者兼受益者」とし、あなたを「受託者」とし、飲食店の土地建物を「信託財産」とすることになります。その土地建物の所有名義も信託を原因としてあなたの名義にし、信託の契約内容を法務局に登記しておいて、あなたがお父様の信託財産の管理処分を任された受託者として、日ごろから家賃収入の管理をして受益者であるお父様の生活費を確保しつつ、ビル建替計画のもと、建物明渡交渉やビル建築の契約締結、これらに必要な資金の借り入れなど一切の手続きできるようにします。

 そうすれば、途中でお父様が認知症になったりして判断できなくなって、成年後見人が別に選任されても、飲食店の土地建物は信託財産のままですから、あなたが信託契約に従って受託者としてビル建替計画を進めることかでできますし、銀行も受託者であるあなたを相手に建物明渡に必要な立退補償金やビル建築資金の融資をしてくれます。

◇相談者
 節税効果は、どうなるのですか?

◆弁護士
 賃貸ビル建替がお父様の生前に完了できた場合には節税効果があるといえます。

 飲食店が立ち退き、更地になった時点でお父様が亡くなってしまうと節税効果は0になるだけでなく増税の逆効果になってしまうので要注意です。飲食店の明け渡し交渉からビルの完成までに3~4年程度かかるとした場合、お父様のお元気なうちに、弁護士、司法書士、税理士などの専門家から民事信託のことを説明する機会を持つことをお勧めします。

 生前に遺言を書いておこうと言うお父様ですから、専門的な見地から順序立ててお話しすることで、ご納得してもらえるものと思います。

 そのためにもお父様には元気で長生きしてもらえることが肝心です。
弁護士 李博盛

 

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