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掲載日 : [20-11-11]   照会数 : 4134

韓国に相続人、遺産分割は …家裁に調停申し立ても

Q

 私と父母を同じくする韓国籍の兄が他界しました。兄は生涯独身で、妻も子もいません。祖父母と両親も既に他界しており、兄の相続人は私を含め、兄の兄弟姉妹になると思います。ただ、父には前妻との間の複数の子がおり、その子らは韓国に在住しています。

 私は遺産分割協議をしたいと思っていますが、韓国に在住する相続人の住所が分かりません。

 このような場合、各相続人の法定相続分がどのようになるのか、日本人が被相続人の場合と比較して教えて下さい。また、遺産分割協議を進めるには具体的にどのようにすれば良いのでしょうか。

A

◆相続順位
 韓国民法における法定相続人の相続順位は、①直系卑属(子や孫)②直系尊属(父母や祖父母)③兄弟姉妹‐の順となり、配偶者は常に第1順位であり日本民法と概ね同じです。

◆法定相続分
 日本民法に基づく法定相続分では配偶者(妻・夫)は2分の1であるのに対し、韓国民法では配偶者の法定相続分は直系卑属の5割増であるという点で大きな違いがあります。

 例えば、相続人が妻及び子3人で、相続財産が4500万円の場合、日本民法では妻が相続する額は2250万円、子は各750万円になります。

 韓国民法では妻は1500万円、子は各1000万円を相続することになります。

 また、韓国民法では日本民法と異なり、父母の両方を同じくする兄弟姉妹と父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹との間に法定相続分に差異はありません。

◆相続人の住所調査等
 相続人の確定のためには、除籍謄本や家族関係登録事項別証明書等を取得する必要がありますが、これらは駐日韓国領事館等で取得できます。

 ただ、相続人の住所までは、それらによって確認できず、筆者が知る限り、韓国に在住する相続人の調査をするには、韓国の弁護士に依頼して、韓国の法院(裁判所)に相続人の住所を不明として、遺産分割協議の調停を申し立てることで住所を確認する(その後、韓国法院への調停の申立は取り下げることができます)という方法があります。

 それによって確認できた住所地宛てに相続が発生し、相続分があることを連絡することにより、遺産分割協議を進めていくことが可能となります。

◆遺産分割協議の進め方
 相続人の住所等が判明すれば、任意の遺産分割協議を進めることと日本の家庭裁判所に遺産分割調停の申立をすることが考えられます。

 相続人の数が多い場合、交通整理という観点からも、早々に、遺産分割調停の申立をするのが望ましいと思われます。

 ただ、韓国に在住する相続人は韓国語しか話せないことが多く、日本の家庭裁判所に出頭しても、調停員との会話が出来ないケースがあります。また、現在のコロナ禍の問題はさておき、旅費の負担も小さくありません。

 そのため、韓国在住の相続人の数が多い場合、同相続人らのうち日本語が堪能な相続人が、日本の家庭裁判所の許可を得て代理人として出頭し、調停手続を進めることが考えられます。相続人らに日本語が堪能な方がいない場合は、一人の韓国弁護士に依頼して、その韓国弁護士が、日本の家庭裁判所の許可を得て出頭するという方法もあります。

 実際、この方法により、何とか調停が成立したケースもあります。

 また、韓国在住の相続人らが調停を申し立てしても何ら応答しない場合は、調停から審判手続に移行して審判により解決することもあります。
梁栄文(大阪弁護士会所属弁護士)

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