掲載日 : [22-08-31] 照会数 : 2322
無断駐車された場合…所有者に自主的に撤去してもらう
Q
所有地上で月極駐車場を経営していますが、1~2カ月前から、誰も契約していない区画に、所有者不明の自動車が1台駐車されています。警察にも通報しましたが、「民事不介入」という理由で対応してもらえず、このままでは新規に駐車場契約を締結することもできず大変困っております。こちらのほうで自動車を撤去してしまってもよいのでしょうか。
A
月極駐車場のトラブルの中でも無断駐車は非常に厄介な問題です。
ご相談内容の中にもあるとおり、警察は刑法等に違反していると言えない限り、民事上の紛争には介入しないという原則(民事不介入の原則)に沿って、「当事者同士で解決してください」と言って、何もしてくれません。
だかといって、自分で勝手に車両を撤去すると、自力救済になってしまい、違法行為となります。
「自力救済」とは、権利を侵害された側が、司法手続きを経ず、実力によって侵害された権利を回復させようとする行為で法律上、禁止されています。
本件の場合、車のタイヤにロックをかけたり、レッカー車で移動させたりすることが考えられますが、これらの行為は、刑法の器物破損罪や窃盗罪に該当しないとも限らず、また民事上も不法行為に該当してしまい、自動車所有者から逆に損害賠償請求をされてしまう可能性があるのです。
警察は何もしてくれず、自分で勝手に撤去することもできないとなると、法的に認められている手続き(民事裁判)の中で自動車を撤去していくほかありません。
ただし、この場合でも、できる限りコストをかけないようにするためには、自動車の所有者を特定して、自主的に撤去してもらう(撤去することを合意してもらう)ことを目標にする必要があります。
無断駐車の場合、手続きを踏めばナンバープレートからでも車両所有者の氏名・住所の開示を受けることができます。
まずは、当該所有者宛てに内容証明郵便で自動車撤去(と無断駐車による損害賠償)を求める手紙を送り、接触を図っていくことが重要になります。
接触ができれば、交渉次第にはなりますが、自動車所有者に資力がない場合には、自動車撤去に同意してもらい、こちらで撤去をしてしまったほうが、裁判手続きで自動車を撤去するよりもコストが低く済む可能性が高いでしょう。
他方で、自動車所有者に資力がある場合、自動車に経済的価値がある場合、又は無断駐車による損害が大きい場合等は、無断駐車期間分の不法行為に基づく損害賠償を求める民事裁判で判決を得た上で、自動車の競売手続きや、資産の差押えを含む強制執行を行ったほうが良い場合もあり得ます。
以上、無断駐車トラブルは駐車場経営に常に付きまとう厄介な問題です。
日頃から、無断駐車をされないように、ポールや鎖等でガードしておくなどの対策をとっておくことが何よりも必要ですが、万一、無断駐車された場合には、自力で何とかしようとせず、まずは弁護士にご相談されることをお勧めします。
弁護士 李将