掲載日 : [2016-06-08] 照会数 : 5019
<川崎市>デモ隊10メートルも進めず…市民6百人が包囲
「許さない!」 「帰れ!」
【神奈川】排外主義的な団体が5日に川崎市中原区で計画していたデモが、市民の猛抗議を受けて10メートルも進めず中止に追い込まれた。道路使用許可を出した神奈川県警がデモを計画した主催者を直接、説得した。この日はヘイトスピーチ対策法が施行されて初となるデモだっただけに、より慎重に判断したものと見られる。カウンター側は拍手を交わしながら「正義が勝ちましたよ。なんでいままでこれができなかったんだろうね」と笑顔を見せていた。
市民側は10時にデモ出発地点の中原公園で待ち受け、監視にあたった。その数は時間とともに増え、最後は約600人(警察推計)を数えた。「『ヘイトスピーチを許さない』かながわ市民ネットワーク」は、脅迫的な文言、侮蔑的な発言があれば県警にその違法性を告発し、ただちにデモを中止に追い込むという作戦だった。そのため、弁護士も数人見守りに着いた。なかには「3分で中止に追い込もう」という声も上がった。
10時を過ぎるとちらほらデモ参加者の姿が。監視団は一斉に「帰れ」コールを浴びせた。11時の出発時間が過ぎると「ヘイトは反対」「デモをやめさせろ」「デモ解散」の声が高まっていった。現場はバスも通れないほどの混乱が続いた。そうしたなかでも自転車が通ると声を掛け合い、歩道を開けた。
デモが20人ほどの隊列をつくって出発しそうになると、市民の側が100人近く道路上に座り込みを始めた。県警は反対車線まで使ってデモ隊を出発させようとしたが、市民を力づくで排除することはしなかった。11時30分を過ぎると「ヘイトデモ中止」の声を上げながら市民が笑顔で歩道に上がった。県警の説得に主催者みずから中止を申し出たと見られている。
一部には「デモ隊のプラカがヘイトスピーチにあたるとの判断があったらしい」との未確認情報も流れた。プラカードには、「日本人を殺した外国人の犯罪件数/中国人33%、韓国人32%」や、「反日国家の国民を公務員に採用するな」「どこの国の超市長」といった福田紀彦川崎市長への個人攻撃がめだった。
デモ隊解散後、川崎市民ネットワークは公園内で締めくくりの集会を開いた。マイクを握った社会福祉法人青丘社の三浦知人さんは「私たちの力でヘイトスピーチを10㍍で中止に追い込んだ」と勝利宣言。自ら座り込みに参加した有田芳生参議院議員も、「法律ができて初めてヘイトスピーチデモを止めることができた」と市民のカウンター行動を称えた。
川崎市ふれあい館の職員、崔江以子さんは「共に生きよう」と呼びかける手紙を直接、デモ主催者に手渡したことを明らかにした。
韓国のKBSニュースはこの日21時、「きょうの川崎は日本各地のヘイトデモが阻止される転換点になるだろう」と解説した。
(2016.6.8 民団新聞)