民団では在日同胞らに対する差別や憎悪を煽るヘイトスピーチの根絶にむけ早急な規制立法を求め、各地方自治体への陳情活動を強めているが、6月24日には東京都議会が、ヘイトスピーチについて国に対策を求める意見書を全会一致で採択した。3日現在、19都府県議会を含め150議会で意見書が採択されている。
「五輪憲章」にも背く
東京都も全会一致で
東京都議会の意見書は、「都内を始め全国の都市において、特定の国籍の外国人を排斥する趣旨の言動、いわゆるヘイトスピーチが行われるなど、外国人の人権が侵害されている事態が見受けられる。このことは、人権が尊重され、一人一人が豊かで安心して生活できる成熟した社会を実現するためにはあってはならないこと」だと強調。
同時に、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに触れ、ヘイトスピーチは「人種、宗教、政治、性別、その他の理由に基づく国や個人に対する差別」を禁じた五輪憲章に反すると指摘。外国人観光客の増加が見込まれるなか、開催都市として憲章の理念を実現しなければならないとして、国会および政府に対し「外国人の人権が十分尊重されるよう、ヘイトスピーチ対策を含めた幅広い啓発活動を行うなど、実効性のある対策を講ずるよう」求めている。
東京都を除き6月中に意見書を可決したのは、21の県市区町村議会。
三重県議会は本会議最終日の6月30日、「差別を扇動するヘイトスピーチ対策について法整備を含む強化策を求める意見書」を賛成多数で可決した。国に意見書を提出するよう求めていた民団三重本部(殷慶基団長)の請願が採択された結果だ。
意見書は、20年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を踏まえて、「ヘイトスピーチを放置すれば、国際社会における我が国への信頼を失うことにもなりかねない」と指摘し、国に対して法整備を含めて対策を強化するよう強く求めた。
ヘイトデモや街宣活動が頻繁に行われている大阪市でも、市議会が6月10日、「ヘイトスピーチの根絶に向けた法整備を求める意見書」を可決した。市議会の行方を見守ってきた民団大阪本部生活部の朴鍾寛さんは、「市長提案の条例案は9月に継続審議となったが、意見書の可決で風穴が開いた。これから府内各市町村に働きかけていく」と意気込む。
このほか、東京では6月19日に新宿区議会が採択。続いて大田区議会も「ヘイトスピーチをはじめとする差別的言動は、本区が推進している国際都市の将来像とは逆行しており、決して容認できるものではない」として6月22日に意見書を可決した。いずれも、民団などが中心となって陳情していた。
(2015.7.8 民団新聞)