権力掌握へのあせり
民生無視のミサイル連射
北韓は2月21日から7月13日までの間に、14回にわたり100発以上の放射砲・弾道ミサイルを発射した。これに費やした財貨は約1億㌦に及ぶ。北韓全住民の1カ月以上の食糧を賄うことができる金額だ。
こうした蕩尽ぶりだけでなく、ミサイルの発射地点の移動にも関心が集まっている。北韓は当初、東海岸の元山付近から東北方向に発射していた。その後、黄海道・苔灘や休戦線北側からわずか20㌔㍍しか離れていない開城から、東海の北側方向に発射している。
これらミサイルは、韓国のほぼ全地域を攻撃できる射程500㌔㍍の「スカッド‐C」型だ。莫大な費用のかかるミサイルをやたらと発射することもさることながら、韓国から至近の距離でこれ見よがしに発射することは、我々に対する大がかりな軍事挑発と見ないわけにはいかない。
金正恩は今年に入り、東・西海側の砲・ミサイル部隊、東・西海海軍司令部、航空師団、ミサイル発射現場などに足繁く通い、「敵どもを水葬にしろ!」「敵艦船の腰を砕いてしまえ!」などと好戦的な発言を繰り返してきた。
火を噴きながら飛んでいく放射砲弾やミサイルを見て喜ぶ金正恩の姿は、まるで戦争ごっこを好む子どもと変わりない。北韓が場所を変えながら奇襲的にミサイルを発射するのには明らかな意図がある。
まず対内的な事情から、不安定な状態にある権力を掌握し、意識の緩みが目立つ住民を結集させるためだ。金日成の婿である張成沢を昨年12月に機関銃で処刑して以降、北韓のエリートたちはいつ、どこで、「張成沢一党」のレッテルを貼られて処刑されるか知れず、戦々恐々だ。
スイスに留学した若い指導者だけに、金正日よりマシだと信じ、改革・開放が進むものと心底から期待した住民たちは、民生に関心を振り向けることのない金正恩に絶望している。こうした意識を統制するために、対南軍事挑発に勝る妙薬はないのだろう。
対外的な側面では、今月初め韓国を訪問し朴槿恵大統領と首脳会談を行った中国の習近平国家主席に対する不満を、間接的に表明したものと言える。金正恩は北京を、習近平は平壌を訪問していないのに、朴大統領は昨年いち早く訪中し、今回は習主席がソウルを訪問した。北韓のこれに対する心痛は深く、これを晴らす意味がある。
加えて、韓国と米国に自らのいわゆる「軍事的威力」を誇示しながら、伝統的な韓米日の三角共助を揺さぶってみようとの意図も含まれている。現在進行中の北・日協議もそれと脈略を一つにするものだ。
一方で北韓は、この9月に開かれる仁川アジア大会に選手団と応援団を派遣すると言ってきた。金日成時代からこれまで変わることのない、典型的な挑発と微笑みの両面作戦である。
過去の北・米交渉の過程に見るように、北韓は核実験をした後に米国とより高位の会談を実現させ、より多くのものを得てきた。しかし今や、戦争ごっこにそのような「果実」はなく、火傷をひどくするだけである。
北韓はこのような和戦両面の戦略が通じないことを明確に認識しなければならない。そして、北韓のミサイル発射を禁止した国連安保理決議を順守しなければならない。我々はこれを悟らせるべく、北韓の相次ぐ軍事挑発に対応する万全の体制を備えるとともに、韓米中、韓米日の共助のもとに、強力な対北制裁によって北韓を内外から圧迫・孤立させることに全力を注ぐだろう。
(2014.7.30 民団新聞)