猛暑が続く中、夏バテにおすすめの韓国家庭料理4品の作り方を韓国家庭料理レストラン「妻家房」の総料理長、柳香姫さんの協力を得て紹介します。
柳香姫さん
韓国・大邱出身。1985年に来日。娘の1歳の誕生日で招待客にふるまった韓国家庭料理が好評を呼び、1993年、夫・呉永錫氏とともに韓国食品とレストラン「妻家房」本店を四谷3丁目にオープン。その後、各地にレストラン店舗と百貨店内のショップを広げた。来日後に、韓国宮廷料理の人間国宝・黄慧性さんに師事した経験も持つ。
열무 물김치 若大根の水キムチ
みずみずしい清涼感
ヨルム(若大根)は30分~1時間程度、塩漬けした後、小麦粉のりを入れて味付けして作った夏にぴったりの水キムチです。
ヨルムとは、韓国語では幼い大根という意味。日本では若大根(間引き大根)と呼ばれています。一般のスーパーなどでは、なかなか手に入らないので、小松菜を代用しても美味しく作れます。
ヨルムキムチはそのまま食べるだけでなく、冷麺やビビンクッスの具材としても使えます。
◆材料
・小松菜(4束程度) ・岩塩(大さじ3) ・わけぎ(1本)
・赤唐辛子(1本) ・小麦粉(大さじ1) ・水(1.5㍑)
・カタクチイワシの魚醤(大さじ½) ・リンゴ(¼個)
・塩(大さじ½) ・砂糖(大さじ1) ・じゃがいも(1個)
・玉ねぎ(半分) ・ニンニク(5粒) ・生姜(15g)
◇下準備
①小松菜は長さ5~6cmの長さに切って洗った後、塩をまんべんなくかけて40分~60分ほど漬けた後、水洗いをし、ざるにのせて5分ほど水気を取る。
②わけぎは長さ3cm程度に切り、唐辛子は長さ2cm、幅5㎜程度で斜めに切る。
③鍋に小麦粉と水500ccを入れてよく混ぜ合わせた後、強火にかけ、沸騰したら中火で3分ほどかき混ぜながら煮つめ小麦粉のりを作る。
④じゃがいもはゆでたあと、水500ccを加えてミキサーにかける。
⑤リンゴ、玉ねぎ、ニンニク、生姜を細かく切った後、水500ccを加えミキサーにかけたあと、キッチンペーパーなどで濾す。
⑥赤唐辛子は2cmくらいに切っておく。
◇つくり方
①下準備の①②③に魚醤を加えて混ぜる。
②塩漬けした小松菜に混ぜ合わせた①を入れ、わけぎと赤唐辛子を入れて和える。
④容器に移し冷蔵後で3週間ぐらい寝かせる。
※リンゴの代わりに梨を代用すると、甘みが増しさらに美味しくなります。
닭백숙 鶏の水炊き
夏の滋養強壮に
鶏は虚弱な体力を補強することから、韓国では夏場の滋養食として親しまれています。日本が「土用の丑の日」にウナギを食べるのと同じです。
韓国では夏の滋養食として参鶏湯が定番ですが、ひな鳥が手に入りにくく手間もかかるため、手軽に作ることができるペッスッもおすすめです。
鶏の水炊きを作ったあと、そのスープに鶏肉を細かく裂いて、お米を加えて煮立てたれば、「タッチュッ」(鶏のお粥)にもなります。
◆材料
・もち米(¾カップ) ・鶏600g(½羽)
・ねぎ(1本) ・粒ニンニク(5~6粒)
・水(3㍑) ・塩(小さじ1) ・干しナツメ(4~5粒)
・ファンギ(キバナオウギ)(2~3本)
◇下準備
①もち米はきれいに洗い、水で2時間ほどふやかし、ざるにのせて10分ほど水気を切る。
②ファンギは水で洗って2時間ほど水に浸す。
◇つくり方
①鍋にファンギと水を注ぎ強火に12分ほどかけて沸騰したら中火にして、さらに45分ほど沸騰させた後、ざるにのせてファンギ汁を作る。
②鍋に鶏とねぎ、ニンニクを入れ、①のファンギ汁を注いで中火で30分ほど煮る。鶏肉はすくって身だけを取って長さ5㎝幅と厚さ5㎜程度に裂き、スープは冷やした後、キッチンタオルなどで濾して出汁を作る。
③鍋にもち米とだし汁を注ぎ強火で9分ほどかけて沸騰したらふたをして中火にする。たまにかき混ぜながら30分ほど煮る。
④おかゆにするなら、裂いた鶏の身を入れて5分ほど煮込んで塩で味付けをして2分ほど煮る。
・ファンギ(キバナオウギ)は日本のスーパーなどでは手に入りにくく、韓国食品店や通販などで販売しています。
콩국수 豆乳冷麺
暑さを忘れる冷やし麺
日本では夏を告げる麺類といえば、冷やしそうめん、冷やし中華などが代表的ですよね。韓国では冷麺と共に、夏場の麺類の中でも愛されているのは「コンクッス(豆乳スープの冷やし麺)」です。
大豆は「畑でとれる肉」と呼ばれるほど植物性たんぱく質が豊富で、毎日食べろといわれるほどヘルシーな食材です。韓国では昔から大豆で多様な料理を作り食べていました。このコンクッスも古くから韓国で食べられてきた健康食です。氷を入れて冷たくしたスープにクッス(麺)を混ぜて食べれば、一層冷感が増し夏の暑さを忘れる珍味です。
大豆をひくとき、好みでごまや松の実、ピーナッツ、くるみなどを加えると、香ばしさが増します。臼がなくてもミキサーにかければOK。
麺は喉ごしなめらかな稲庭うどんがおすすめですが、そうめんでも代用できます。
◆材料
・大豆(1カップ1¼) ・ゆで水(4¼カップ)
・スープ用冷水(4½カップ) ・塩(大さじ1)
・麺(350~400g) ・ゆで水(10カップ)
・差し水(1カップ) ・きゅうり(⅓本) ・トマト(½個)
◇下準備
①大豆はきれいに洗い水に5時間ほど浸し、ざるにあげ水気をとる。
②きゅうりは長さ5cm、幅3㎜に千切り。
③トマトは縦半分に切ったあと幅2㎝に切る。
◇つくり方
①鍋に浸した大豆と水を入れ強火で5分ほどゆでる。沸騰したらさらに5分ほどゆで、ざるに上げ冷水でよくもみ洗いしながら皮を剥く。
②ゆでた大豆とスープ用冷水を入れて2分ほどミキサーにかける。粉ふるい器で濾し、塩で味を付ける。
③鍋にたっぷりの水を注ぎ沸騰したら麺を入れてゆでる。時間は麺の種類に合わせる。
④ゆでた麺を冷水で水洗いしてから1玉を作り、ざるに乗せて水気を切る。
⑤器に麺を盛ってスープを注いだ後、きゅうりとトマトをのせる。
スープ作りの手間を省き、市販の豆乳で代用しても十分にコンクッスを味わえます。
고등어 조림 サバのピリ辛煮
国民的魚のおかず
日本の「サバ味噌」のようにサバのピリ辛煮は韓国でも国民的魚料理です。
サバは「海の麦」と呼ばれるほど栄養価が豊富な高カロリー食品で、秋になると脂がのっておいしくて栄養価も高くなります。
辛めのタレと柔らかいサバの身、そして名脇役の大根が美味しくてご飯もお酒もすすみます。日本のように汁気をたっぷり残す煮付けとは違い、しっかり煮つめてヤンニョンを染み込ませることで、味が染みておいしいですよ。
大根を鍋底に敷くのは、味がよく染みておいしくなるだけでなく、魚が焦げる心配がないので、安心して長時間火にかけられます。
長ねぎと唐辛子は最後に入れて火を止めるときれいな色に仕上がります。
サンマや太刀魚でも、ほぼ同じ手順で調理できます。
◆材料
・サバ(1匹) ・塩(小さじ½)
・大根(½本) ・長ねぎ(1本)
・赤または青唐辛子(2~3本)
◎ヤンニョムジャン
・醤油(大さじ5)
・味噌 ・コチュジャン ・おろしニンニク
・唐辛子粉 ・砂糖 (各大さじ1)
・おろし生姜(小さじ½) ・コショウ(少々)
・水(½カップ)
◇下準備
①サバは頭と内臓を取り出しきれいに洗い斜めに4つ切り、軽く塩をふって30分ほど置いて水気を拭く。
②大根は厚さ1cm程度の半月切り。
③唐辛子とねぎは厚さ5mm程度に斜めに切る。
④ヤンニョムジャンを作る。
◇つくり方
①鍋に大根を敷き、ヤンニョムジャンの半分程度をかけて混ぜ合わせ、その上にサバを乗せる。
②サバの上から残りのヤンニョムジャンをまんべんなくかけて落としぶたをして火にかける。沸騰したら中火にし、たまに汁をかけながら20分ほど煮る。
③汁が煮詰まったら、赤・青唐辛子とねぎを入れて2分ほどさらに煮込む。