掲載日 : [2022-04-01] 照会数 : 7669
韓国の兵役義務、経験者 徐明煥さんに聞く
[ 徐明煥さん ]
満28歳までに1年半 今も休戦中 50万の兵を維持
命令には絶対服従 暴言も耐えて
新大久保語学院池袋校(東京・豊島区)は5日、オンライン講義「イベントプラス」を開催し、東京韓国教育院研究員の徐明煥さんが「兵役経験者に聞く韓国の軍隊の話。ネットフリックス『D.P.ー脱走兵追跡官ー」の内容は本当なのか』をテーマに語った。
講義はソウル出身で、20代で入隊し、2年間の兵役義務を果たした徐さんが、韓国の軍隊システムや芸能人の兵役問題、自身が軍隊で経験したリアルな話などを紹介した。
韓国では満19歳(日本の年齢では18歳)の成人男性に兵役義務が課せられる。対象年齢に達した男性には兵務庁から「入隊招集通知書」が届き、徴兵検査と判定を受ける。入隊期限は満28歳までだ。
軍隊の服務は「現役」「補充役」「予備役(予備軍)」に分かれる。 「現役」(1~3級)判定者は現役兵として入営する。「補充役(社会服務要員)」(4級)は、基礎疾患や身体事情によって現役服務は難しい人が社会服務要員として社会福祉や行政業務などの代替服務に就く。
除隊後の8年間を「予備役(予備軍)」といい、1年に2日間の訓練が行われる。20歳で入隊した場合、民防衛を含めて約20年間の服務義務を果たさなければならない。
韓国軍には、陸軍/海兵隊、海軍、空軍がある。
徐さんが入隊した当時の現役兵は約60万人だったが、現在は約51万人に減少している。その理由は主に少子化問題や人口の減少だと指摘した。
また、「満25歳以上の兵役未了者は海外渡航時に兵務庁の許可が必要になる」とあまり知られていない話も紹介した。
服務期間は、徐さんが陸軍に入隊した2004年当時は24カ月、現在は18カ月に短縮されている。陸軍と同じく、海軍/海兵隊、空軍、公益勤務も04年度と比較すると半年から7カ月短縮されている。
韓国ではもっと短縮すべきとの議論もあったが、「韓国は北韓と休戦中で戦争は終わっていない。現役兵がいないと戦争という状態のなかで部隊を維持することはできない」と語った。
勤務は通常勤務、警戒勤務、軍事訓練(射撃、特殊訓練など)に分かれる。また基本的休暇は3泊4日だ。徐さん自身は3泊4日で4回の定期休暇があった。現在は3泊4日で他の休暇を含めて28日間の定期休暇がとれるようになった。
給料は04年度で毎月約7万ウォン程度。徐さんは2年間で4万円を貯金して、除隊後、アコースティックギターを購入した。2022年度は、二等兵51万ウォン、一等兵55万ウォン、上兵61万ウォン、兵長67万ウォンとなっている。
韓流俳優やKーPOPアイドルのなかで実技が優秀な兵士に与えられる「特級兵士」(芸能兵士)についても語った。芸能兵士は国防広報院に所属し、兵士の士気を高めるために慰問公演や国防部の広報などを務めてきたが、彼らが訓練を受けずに活動していることが社会問題となり2013年に廃止された。芸能人は一般兵士として入隊することになっている。
ネットフリックスのオリジナル韓国ドラマ「D.P.ー脱走兵追跡官ー」では、「軍隊では年齢は関係なく、先に入隊した者が先輩になるが、命令には絶対に従わなければならない」と指摘し、上下関係を明確にするために「クンギルルチャップタ」(軍規を正す・規律を取り戻す)の指導をする」。
「いきなり軍人になり、命令体系に慣れていないから年下からやれと言われると嫌なんです。するとそこでもめて事故が起きたりする」 軍規を正す指導は、後輩兵に暴言を吐くことで上下関係や命令体系を植えつける目的がある。徐さんは「20歳までに聞いた暴言より、2年間に聞いた暴言の方が多かった」という。一見すると合理性が通用しない軍隊ではあるが、世界唯一の分断国家として戦争中(休戦中)という特殊な状況が今の韓国軍隊やドラマ「D.P.ー脱走兵追跡官ー」にもよく表れているという。
この日は参加者との質疑応答や事前に受け取ったアンケートの質問にも答えた。
(2022.03.30 民団新聞)