「情結び」と呼ばれるポジャギ包みと出会い、進むべき道を見つけた李禮圭さん。ソウルで2017年に設立された「韓国ポジャギアート協会」(李ユニョン会長)で、海外から学びに来た初の受講生として講師になる民間資格を取得。19年6月から同会東京・神奈川支部の支部長として、アトリエ「ダンビ」(東京・世田谷区)で、ポジャギ包みを指導している。
母国で資格取り日本で普及活動
アトリエの棚には、李さんが考案したものや、「トンボ結び」「重ねリボン」「ティアラ結び」といった、多様なポジャギ包みが並んでいる。結び方は簡素なものから複雑なものまでさまざまだ。ポジャギで包んだ嫁入り道具の布団や新郎側から新婦の家に届ける贈り物「イェムル」が入った箱「ハム」もあった。
慶事や名節、1歳の誕生日を祝う韓国伝統行事「ぺギルチャンチ」などで大切な贈り物をポジャギで包むのは、「福を包む」という意味があるからだ。
ソウル出身。ウェブ関係の仕事に就いた後、日本語を学ぶために来日。帰国後、日本人男性と結婚し、10年から日本で暮らす。
当時、自宅で韓国語を教えていたが体調を崩し、仕事から離れた。インターネットで次の仕事を探していた時に出会ったのは、結び目部分がきれいに織り込まれた「情結び」というポジャギ包み。
「その包みを見た時に瞬間で魅せられ、すぐに夫に相談した」。当時、ポジャギ包みを習えるのは韓国だけ。体調は万全ではなかったが、やりたい一心で韓国へ行った。
同会は、李会長が出産後、子育てのために元の職場に戻れなかったという経験から、同じ思いをしている女性たちに新しい世界で第2の人生を歩んでほしいという思いから設立した。
また、「ポジャギアート」と命名したのは、ペーパーやビニールのラッピングに慣れている若者に、包むだけではなく、覆ったり、バッグとして使える機能性の高いポジャギを生活アートとして紹介するためだ。
同会には資格クラスが複数あり、クラスに応じて20種類、22種類の包み方を習う。伝統的なものから李会長が考案したものまで全部で100種類以上に及ぶ。
18年、李さんはポジャギアート資格基礎クラスで基本の22種類の包み方とポジャギの歴史、包装方法、素材などを3日間で学び、試験に合格し民間資格を取得した。その後、何度か通って別のクラスの資格も取得。100種類以上の結び方をマスターした。
最初、自宅で教えていたときに在日韓国人や日本人が興味を持ってくれたという。「それが私のエネルギーになった」
その後、同会から「日本でも広げてほしい」と声がかかり、19年6月から正式に支部長として活動を開始。その後、新型コロナウイルスの感染拡大により2年間、活動を中止した。
朝鮮時代前からあったというポジャギは、韓国人の生活に根付いてきた。包み方に意味があるのを知ることができるのは、ポジャギの文化が脈々と受け継がれてきたからにほかならない。
現在、韓国での同会会員は2700人。この5年で人気が出てきたという。一方、日本では、資格を取得し講師として活動しているのは李さんを含めて15人にすぎない。
韓国では生活の中に新しい文化として定着したと感じている。今、日本では韓国という言葉が当たり前のように聞かれるようになった。「キムチやナムル、ビビンパみたいに、ポジャギと聞いたら『韓国の風呂敷ね』って言われるように広めたい」といい、「一緒に楽しんで体験できる場所をたくさん、作っていきたい」と目を輝かせた。
<専門家コース>
①ポジャギアート資格基礎クラス(2級)=全5回(3回は講義、4回目試験、5回目講義レッスン)。受講期間は受講生の都合に合わせる。総額13万4500円(受講料、資格申し込み料、協会登録・年会費、材料代含む)。
②ポジャギアート資格専門家クラス(1級)=3週間コース(週1回各2時間)。総額14万800円(受講料、資格申し込み料、材料代含む)。
他にフリーレッスン、ワンデーレッスンもある。
詳細はホームページ(
danbi.amebaownd.com)。
(2022.07.20 民団新聞)