掲載日 : [2022-07-22] 照会数 : 2541
似ているようで違う 幻の企画展「昆布とミヨク」を語る
[ 韓国では出産後や誕生日に「ミヨックッ」(ワカメスープ)が欠かせない ]
[ 日本で漁師の神様は「エビス」 ]
韓日共同で企画…産神にささげるわかめスープ 歴博講演会
【千葉】新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、幻の国際企画展示となった「昆布とミヨク(わかめ)」について語る講演会が9日、国立歴史民俗博物館(佐倉市)であった。韓国では2019年10月2日から20年2月2日まで展示され好評を博した。日本でも20年3月17日から5月17日まで予定されていたが、同館が休館に追い込まれ、実現しなかった。企画を準備した松田睦彦研究部民俗研究系准教授が「講演を通して心の整理をしたい」と講演に立った。
国立歴史民俗博物館と韓国国立民俗博物館は両館の学術研究交流の促進を目的として15年から国際交流事業「韓日地域研究の実践的展開」を進めてきた。同時に共同研究「海の生産と信仰・儀礼をめぐる文化体系の韓日比較研究」を立ち上げ3年間、韓国と日本の各地を訪れて準備研究を行った。その成果が両館共同で企画を練った今回の大規模展覧会「昆布とミヨク」だった。展示資料は400件。韓日両国ともほぼ同じ内容だった。
昆布とミヨク(わかめ)。韓国でも日本でも、どちらもなじみ深い海藻だ。古くから日々の暮らしの糧とされてきた。韓国ではわかめが重要な役割を果たし、儀礼食や贈答品という観点からは日本で昆布が重要な役割を果たしてきた。海底の岩に根を張って、長く青黒いその姿を揺らす昆布とわかめは似ているけれど違う、違うけれどどこか似ている。日本と韓国の関係を昆布とわかめに象徴させることができるのではないかという発想から同企画がスタートした。
キムチの味を決めるのは様々な塩辛と魚醤。塩辛は日本でも保存食、調味料として重要な役割を果たし、近代まで日常的に食べられていたが、だしや醤油の文化が発達するにつれて「どろくさい」と隅に追いやられていった。かわって、かつおや昆布に代表されるだしに押されるようになっていった。
一方、熨斗(のし)はもてなしやお祝いの儀礼には欠かせない海産物である。贈り物が「清らか」、「清浄」であることを象徴しているという。本来は熨斗鮑のことを指す。韓国では「添え状」や「物目」で記すので熨斗は一般的ではないようだ。
漁師が海にお供え物を流すのは共通している。ただし、信仰の対象は日本が「龍宮」。韓国は「龍王」であり、トッケビが人間と龍王をつなぐ。漁師の神様は韓国が「将軍神」、日本は「エビス」という違いがある。
松田准教授は「今回の展示は類似と相違という観点から光をあてた。先人たちが互いに影響しあい、主体的に相手の文化を受け入れてきたことを知ってほしい」と述べた。
(2022.07.20 民団新聞)