掲載日 : [2016-11-09] 照会数 : 4078
在日韓国奨学会創立60周年…人材約千人を輩出
[ 記念式典であいさつする徐龍達名誉会長 ]
【大阪】育英団体「在日韓国奨学会」(略称・韓奨、金安弘・李清一共同代表)が創立60周年を迎えた。同奨学会はボランティアの役員、理事が毎月、篤志家のもとを回ってカンパを集め、近畿地域の大学に在学する2年生以上の同胞学生に配分してきた。これまでに巣立った奨学生は約1000人。5日、大阪市内のホテルで記念の式典を行った。
国籍条項の苦い体験超えて
大学生らが後輩のため設立
韓奨は国籍要件のため日本育英会や自治体などから奨学金を受給できず、学費の工面に苦労した体験を持つ徐龍達さん(桃山学院大学名誉教授、在日韓国奨学会名誉会長)をはじめとする大学生や大学院生が1956年8月25日に設立。後輩たちのためにと毎週末、同胞実業家からカンパを募り、翌57年に第1回奨学生7人を採用した。
奨学金は一人あたり月額3000円(現在は3万円、返済義務なし)。当時の国立大学授業料が月額500円だったため、学費以上に生活扶助にも役だったようだ。徐名誉会長は設立当初を振り返って「本代もなく『赤貧を洗う』ような貧困のなかにあっても、韓国戦争休戦後の祖国建設に貢献する人材の育成をめざした」と話す。
奨学生の採用にあたって本名常用を重視する伝統はこのときからのもの。また、主体性のある人材の育成を心がけ、学者、研究者、芸術家、宗教人ら知識人を招いて月例講演会を開き、奨学生たちに語らいの場を提供してきた。奨学生のなかには大学教授、弁護士、公認会計士、税理士、医師として活躍している人材も多い。
奨学生の選考対象地域は当初、大阪府から京阪神に限っていたが、61年から近畿2府4県に拡大。また、「冠名」奨学金が当初の「柳川栄次郎奨学金」に始まり「シャローム・セットンの家」、「SBJ銀行」、「レオ財団」と増えるなか、同胞に限っていた支給対象に日本人学生も含め、奨学会を軸にした在日韓国人と日本人学生の出会いと対話を産み出してきた。
記念式典には関係者100人が出席。第1部で京都造形芸術大学の仲尾宏さんが「朝鮮通信使の歴史から学ぶ日韓関係の展望〜ユネスコ記憶遺産共同申請の取り組みをめぐって」をテーマに記念講演。第2部の記念式典では元奨学生の金有作さん(民団京都本部常任顧問、韓奨友の会)が「思い出」を語った。
(2016.11.9 民団新聞)