掲載日 : [2016-12-21] 照会数 : 5990
岐路に立つパチンコ業界<下>
[ カジノ法案可決による法規制も予想される(12月15日未明) ]
狙い撃ち行政指導
繁忙期…市場淘汰さらに
師走で賑わう巷間、パチンコホールにとって年末は営業上、極めて重要な時期である。年末年始の繁忙期に向けて新機種の入れ替えを行い、新規開店、改装開店は言うに及ばず、既存店も顧客の開拓・囲い込み、売上アップをめざす。
しかしながら今年の年末期は例年と比べて様相が異なる。本来なら台数規模を問わずほとんどのホールが恒例とも言うべき入替開店を行うが、開店を打てる業者と打てない業者との差異が浮き彫りになっている。これは昨年からの「検定機とは性能が異なる可能性のある遊技機」撤去の影響である。
客離れ・売上低下の進む状況の中、高騰する遊技機購入費はホール経営の上で大きな負担になっているが、今回の撤去で更にその負担が重くのしかかる。本来ならメーカーの製造責任が問われて然るべき案件であっても、結局はホールにそのしわ寄せが行く。
年内、待ったなしで撤去・入替に対処する為に例年以上の負担が強いられているのだ。関東のある中堅業者は「行政の指導がとても厳しく営業停止等の処分も辞さないと言われ、とにもかくにも撤去・入替を行った。来年の遊技機導入の計画も大幅な見直しを強いられている」と話す。
中小のホール業者は更に深刻だ。
「資金力のある大手チェーン店はそれでも対応できるのだろうが、うちのような小さなところは死活問題だ。撤去はしても入れ替え自体ができなく(撤去後に)文字通りベニヤを打っての営業を行うか、閉店を余儀なくされるホールが出てくるだろう」と東北の業者は予測する。
実際、首都圏ではすでに閉店している中小業者も出てきている。資金力が勝る大手チェーン店がそれでも入替開店を打ち、財務基盤の弱い業者が対応できない状況下、市場淘汰が進んでいく。
他方、業界最大手の業者もこれまでの積極的な拡大方針から、採算性の弱い店舗の整理と新規展開の見直しを打ち出すなどしている。業界の再編成が進み、ホール数も1万を切るのが確実視されているのだ。
こうした撤去、広告規制等の数年来の一連の厳しい「行政指導」には当局の強い意向がうかがえる。この背景には北韓・朝総連への資金流入疑惑とカジノ法案があると言われている。
北韓の度重なるミサイル発射、核実験の資金源の一部として朝総連系ホール業者からの資金供与疑惑が囁かれていたのは公然たる事実だ。
昨今、経営環境の悪化や朝銀の破綻、ホール経営者の世代交代、北の政権への幻滅感から、かつての規模や頻度とは比較にならない実態であるとの指摘もあるが、近年の北韓の暴挙や拉致問題の停滞によって行政当局が過敏になっていることは否定できない。
「少額であるが金剛山歌劇団のチケット購入や協賛広告を頼まれることは今でもあり、とても神経を使う」とある地方の組合幹部経験者は語る。
たとえそれが少額であろうとも行政当局が敏感に反応していることは肌で感じると言う。
「北だろうが南だろうが一緒くたにされてしまう」と憤る韓国系、中国系そして、日本人のホール事業者は多い。
去る12月15日未明、衆院議員本会議にて統合型リゾート(IR)整備推進法、いわゆる「カジノ法案」が可決された。同法がパチンコ業界に与える影響については様々な角度からの声が挙がっているが、ふるくから庶民の娯楽として親しまれてきたパチンコ業にも焦点が当てられた。
カジノの解禁、つまりIR施設の開設(次の段階である実施に向けての法案審議を踏まえて)、これに併せての環境整備の一環として、昨今の行政指導があるとする声は多い。風営法の運用、三点方式の解釈・取り扱い等を踏まえた上で行政当局が更なる指導・規制を打ち出してくることは想像に難くない。
約80年来、庶民のささやかな娯楽として発展してきたパチンコ業界。過去を通して最大級の文字通りの岐路に立っており、まさに生き残りをかけた業界全体の取り組みが問われている。
(2016.12.21 民団新聞)