掲載日 : [2016-12-07] 照会数 : 5642
歴史の風化と権力に抗って…筑豊で朝鮮人強制労働問題掘り起こし
記録作家・林えいだいさん 反骨の半生を映像化
福岡県筑豊の旧産炭地を舞台に歴史の闇に埋もれた朝鮮人強制労働問題を掘り起こしてきたルポルタージュ作家、林えいだいさん(82、福岡県田川市在住=写真はRKB毎日放送)の反骨精神あふれる半生を描いたドキュメンタリー映画「抗い」(西嶋真司監督、100分)が完成した。
冒頭、カメラが「アリラン峠」を案内する林さんを映し出す。韓半島から徴用された同胞たちが炭鉱に向かうときに歩いた道だ。やがてひと抱えの粗末な石がいくつも置かれた場所にたどり着く。地中には炭鉱事故で犠牲になった同胞が葬られているという。墓標らしきものはない。
林さんは9歳の時、神主だった父の非業の死に直面する。炭鉱から脱走してきた朝鮮人を何人もかくまってきたこと、出征する兵士に「無駄死にせず、故郷の妻子のもとに帰ってこい」とあいさつしたことから特高警察に検挙された。死亡は拷問を受けてから間もなくのことだった。
国家によって肉親を奪われた幼少時の記憶が、林さんを国家に棄てられた人々の救済と鎮魂へと駆り立てた。37歳のとき、公害問題に直面。告発運動に取り組むため、北九州市教育委員会社会教育主事の職を投げ打ってフリーの記録作家に。
西嶋監督は「国家権力への抗い、歴史が風化することへの抗い。林さんの生き様には震えるほどの感銘を覚えた」と話す。
林さんは現在、肺がんで闘病中。抗がん剤の副作用でペンも持てないため、セロテープで指に巻き付けながら、いまも懸命に記録を残している。
2017年1月下旬、東京・渋谷のシアター「イメージフォーラム」で公開の予定。
(2016.12.7 民団新聞)