掲載日 : [2021-01-15] 照会数 : 7329
阪神淡路大震災時 被災者に寄り添う…在日の精神科医安克昌を映画化
[ 映画で主人公役を演じた柄本佑さん(ギャガ提供) ]
NHKドラマ「心の傷を癒す」再編集
阪神淡路大震災発生時、自ら傷つきながら他の被災者の心のケアに奔走した在日韓国人の精神科医、安克昌(アン・カツマサ)さんをモデルとした映画が1月から全国で順次劇場公開される。映画化にあたっては昨年1月から2月にかけてNHK土曜ドラマとして全4回放映された「心の傷を癒すということ」を再編集。テレビで放映されなかった未公開シーンを加えるなどした。
29日から全国上映へ
安克昌さんは95年の阪神・淡路大震災直後、手探りながらも多くの被災者の声に耳を傾け、心の痛みを共に感じ、寄り添い続けた。
この結果、震災後の心のケアに道筋をつけ、日本におけるPTSD(心的外傷後ストレス障害)研究の先駆者になった。震災1年後の神戸大学助手当時に臨床報告としてまとめた「心の傷を癒すということ」は第18回サントリー学芸賞を受賞。2000年12月に死去した。
NHKは阪神淡路大震災から25年を迎えた20年、安克昌さんの遺族関係者への取材から得た事実をもとに、人の心の傷に寄り添い続けた精神科医の物語として再構成し、人物や団体名を改称したうえでフィクションとしてドラマ化。主人公の精神科医「安和隆」に柄本佑さん、妻役を尾野真千子さんが演じた。
映画は安克昌さんの一生がトータルに理解できるよう116分に編集。著作権はNHKからレンタルしてもらった。制作にあたっては会計の透明性を担保するため、税理士や弁護士を中心とする「制作委員会」を発足させた。事務局責任者には主人公の実弟である成洋さんが加わっている。
成洋さんは「25年前に描かれた原作が、その原作者が没して19年後に『ドラマ』という形で表現を得る。そしてその『ドラマ』を母体として、当の制作者サイドからの自然発生的な『熱量』によってさらに『映画』というまた別の表現を得た」と喜びを語った。
配給は業界大手のギャガ株式会社。1月29日に関東一円・北海道・東北で封切り。2月12日からは神戸をはじめとした関西・名古屋・福岡など西日本地区での上映が予定されている。最終的には3カ月間かけて全国47都道府県で順次公開される。
(2021.01.15 民団新聞)