掲載日 : [2021-06-27] 照会数 : 3272
【新刊紹介】「お月さんのシャーベット」 紙人形がイキイキ動き出す
ある団地で起きた真夏の夜の奇跡を描いたファンタジー。寝苦しさが増していくこの時期にぴったり。
暑くて眠れず、エアコンも扇風機も役に立たないほど。おまけに明るいお月さんまで溶けだした。班長のおばあちゃんはたらいを抱えて黄色いしずくを受け止めた。試しに冷凍庫で凍らしてシャーベットにしてみたところ、これが冷たくて甘い。
団地の仲間に分けてあげたところ、「あついのがすーっと飛んでいった」。この日みんな、窓を全開にし、扇風機もエアコンも消していい夢を見ることができた。
話はこれで終わらない。今度はお月さんが消え、住むところがなくなって困っているうさぎさんが訪ねてきた。おばあちゃんがしずくを植木鉢にかけてあげたところ、大きな月見草が咲く。すると、真っ暗な夜空に小さなお月さんが現れ、やがて満月になった。
〝絵本界のノーベル賞〟ともいわれるスウェーデン政府主催「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を2020年に受賞したペク・ヒナさんによる初期作品。ペクさん自ら手作りしたミニチュア模型を背景に、登場人物の紙人形が生命を吹き込まれ、イキイキ動き出す。訳は長谷川義史さん。
『お月さんのシャーベット』
1540円(税込)。 ブロンズ新社(03・3498・0745)。
(202106.25 民団新聞)