掲載日 : [2021-07-22] 照会数 : 4365
【新刊紹介】『僕だって、大丈夫じゃない』
診療所医師、平和な日常だが
韓国の片田舎で開業医を務める40代医師のエッセイ『僕だって、大丈夫じゃない~それでも互いに生かし生かされる、僕とあなたの平凡な日々~』(キム・シヨン著、岡崎暢子訳)が、キネマ旬報社から刊行された。
本書は、医者のエッセイの登竜門「第18回ハンミ随筆文学賞」優秀賞を受賞した作品が収録されている。
著者は総合病院のER(救急救命室)で働く医師として、緊張感を強いられる日々を送っていたが、同時に自分が生きていることを実感していた。
その後、縁あって開業医となるが、患者のほとんどはお年寄りたち。鼻風邪を引いた、糖尿の薬をもらいに、といった理由で診療所を訪ねてくる。
人間の生死をかけた闘いの現場から移った著者は、平和すぎる診療所の毎日は退屈で、むなしさも感じていた。
そんな心情を察知することなく、思いを素直にぶつけてくる患者たち。わがままだったり、おせっかいだったりするが、著者は触れ合いを通じて、自分が生かされていることに気づくのである。善良な市民と著者とのやり取りに笑ったり、泣かされたりするだろう。
1500円+税。 キネマ旬報社(03・6268・9701)。
(2021.07.21 民団新聞)