掲載日 : [2021-07-21] 照会数 : 3973
「沙也可~海峡を越えた愛~」9月再演
[ 「沙也可」の衣装合わせで。前列左から2人目が山中勝博さん、3人目が倉科遼さん ]
[ 沙也可12代子孫の金昌先さん ]
「秀吉の出兵に義なし」と投降…朝鮮軍で戦った武将
豊臣秀吉の朝鮮侵略(壬辰倭乱)の際、鉄砲隊を率いて朝鮮に出兵しながら、「この戦いに義なし」と朝鮮軍に投降した武将、沙也可(金忠善)の人生と愛を描いた舞台「沙也可~海峡を越えた愛~」が9月、東京の渋谷区文化総合センター大和田伝承ホールで再演される。今回の東京公演は、「高麗若光の会」の朴仁作会長と朴清博副会長、同会副会長で沙也可12代目子孫の金昌先さんの強い要望によって実現した。
沙也可は加藤清正配下の日本の武将で、1592年釜山に上陸したが、朝鮮の文化を慕い、「秀吉の出兵に義はない」と配下とともに投降して鉄砲術を朝鮮軍に伝えた。その後、金忠善と名乗って朝鮮王に仕え、勲功をあげたと伝えられている。この劇は、昨年10月、東京で初演された。
今回の再演は昨年10月の初演直前、企画・製作会社「Yプロジェクト」代表の山中勝博さんが、朴清博副会長と出会ったのがきっかけとなった。
初演は、朴仁作会長を除く同会の役員約20人が舞台を鑑賞。舞台を観た朴副会長は「世界平和を願うという内容がうまく構成されているという印象だった」といい、「ぜひ、在日同胞も含めて皆さんに知ってもらいたいという気持ちが強かった」と話す。
金さんは、2012年に韓国政府の支援によって大邱の達城郡に建てられた「達城韓日友好館」について言及。同館では沙也加に関する資料を中心に展示している。
「素晴らしい韓日友好館ができて誇りに思っている」と感想を述べ、当時、火縄銃の技術を韓国に伝えた沙也加について「日本軍との戦いにおいて沙也可は多大な貢献をした。また、韓国人にしてみれば誇りになる人物」だと語った。
朴会長は「日本軍の武将が豊臣秀吉を裏切って韓国人のために戦ったということを、日本の方が取り上げたことに鳥肌がたった」と話す。
当初、再演は大阪で行う予定だったが、朴会長らは、演劇製作の労をねぎらう食事会を開催。倉科遼さん(製作総指揮、原作、脚本)と山中さんを前に「たくさんの同胞たちに観てもらいたい」と説明、倉科さんの承諾が得られ東京での再演が決まった。同会がサポートにあたる。
12代子孫が後押し 「韓日友好の糸口に」
沙也可の生き方について朴会長は、大義名分のない戦いに動員されたことに対して、若い武将が憤りを感じて投降したことに触れ、「今回の舞台には在日韓国人だけではなく、日本の方にもたくさん観に来ていただきたい。沙也可が何を夢見ていたのか、何を考えていたのかを、ここで皆が考える必要があるんじゃないかと思う」と語った。
朴副会長は「こういう歴史があったということが分かることによって韓日関係が親しくなり、前に進んでいくのではないか」と期待を寄せている。 金さんは「この作品をきっかけに、韓国と日本がもっと仲良くなれたらうれしい」と強調した。
「沙也可~海峡を越えた愛~」9月8日~12日。A席8000円、B席7000円ほか。電話予約はカンフェティチケットセンター(0120・240・540)平日10~18時。問い合わせはYプロジェクト(03・3485・2089)10~18時。土・日・祝日除く。
(2021.07.21 民団新聞)