掲載日 : [2017-02-22] 照会数 : 5508
<新刊紹介>在日韓国人金融機関の夢と挫折
日本一の信用組合という夢を追い続けた「闇の帝王」こと李熙健氏、新銀行設立のために奔走した「パチンコ王」ことマルハンの韓昌祐氏、危機的状況にあった信用組合を預金量で全国一に育てた「タクシー界の革命児」こと青木定雄氏。在日韓国人の金融機関という夢を実現しようと奮闘した3人の実業家に光をあてたノンフィクション。
本書の半分以上を占めるのが、作者自ら「ライフワーク」と認める李熙健氏の一代記だ。闇市から大阪興銀を設立、誰もが考えつかなかったアイデアとサービスで預金量を拡大していった経緯を関西における在日史ともからめながら描いている。
しかし、関西興銀として普銀転換をめざしたところで破綻した。これは次章以降の韓氏、青木氏にも共通するところだが、全体的に栄光と挫折の人間ドラマとなっており、興味が尽きない。
実に細やかで丹念な取材を重ね、冷静かつ広角的な視点で3人の軌跡を追った。いまだからこそ語れるというお宝級のエピソードも随所に。一方、在日3世の朴一さんだからこそというべきか、行間からは1世世代への確かな畏敬の念が伝わってくる。講談社プラスアルファ文庫(03・5395・4415)、税別630円。
(2017.2.22 民団新聞)