遺作の詩、ゆかりの品など
立教大学立教学院展示館
清らかな精神性と深い自己省察によってつむぎ出された詩が、韓国ばかりか海外でも多くのファンを持つ詩人・尹東柱。その遺稿・遺品が、ゆかりの福岡、京都に続き、東京都豊島区西池袋の立教大学立教学院で展示されている。今月で没後70年を迎え「詩人尹東柱を記念する立教の会」と、立教学院展示館が共同で企画した。
尹東柱はソウルの延禧専門学校(現在の延世大学)を卒業後、英文科専科生として立教大学に42年4月から半年間学んだ。軍部の圧力を嫌って京都の同志社大学に移ったとき、朝鮮語で詩を書いたことから治安維持法の疑いで逮捕され、福岡刑務所で獄死した。
「立教の会」は展示にあたって、「韓国時代、留学先の立教と同志社で学んだ時代、福岡刑務所までの27年の生涯をストーリーできっちり伝える」構成とした。
展示品の多くは尹東柱の甥・尹仁石氏と延世大学尹東柱記念事業会から借り受けた複製品だが、立教大学にゆかりの品々も観覧者の目を引いた。
在学中に友人の姜処重へ手紙とともに送った5編の詩には立教のマーク入りの便箋が使われた。当時の成績表も残されている。見ると東洋哲学史が80点、英文学演習は85点だった。尹東柱が都内で下宿した「六畳部屋」の所在地も独自の調査でほぼ、突き止めた。
フロア内では同大生が尹東柱の足跡をまとめた卒業映像作品「たやすく書かれた詩」(39分、14年3月)が上映され、モニター前には人だかりが絶えなかった。
「立教の会」の堤さと子さんは、「尹東柱は抵抗詩人というより、自分の思いをそのまま朝鮮語に託しただけ。なのに、あの時代状況が死に至らしめた。罪をでっち上げられたことに、日本人として心が痛む。いま作品を読み返しても、平和を願うひたむきなメッセージが鮮烈に伝わってくる」と話す。
(2015.2.25 民団新聞)