掲載日 : [2017-01-26] 照会数 : 5684
<韓国>各種支援制度と在日韓国人移住者<上>
[ 女性家族部の支援のもと、全国各地に「多文化家族支援センター」が設けられている。写真は全羅南道順天市 ]
保育料、学習サポートなど
現実無視 対象外に
永住外国人に対する地方選挙権が日本に先駆けて付与されている韓国では、外国人住民や国際結婚家庭に対する支援が近年積極的に行われている。法令に依り、多文化家族への配慮が相当に行き届いていることは先進国として高く評価できるが、その半面、在日として生まれた韓国籍者が韓国に移住するようになったケースでは、これらの支援制度から除外されている。その実態とこの間の民団の取り組みと課題について整理してみたい。(民団中央本部生活局)
多文化家庭への配慮
韓国では2007年に在韓外国人処遇法、08年に多文化家族支援法が制定されている。これらの法律の施行は、外国籍住民とその家族が韓国社会で安心して暮らすことができるよう、国家が率先して国際的で先進的な規範を示したという意味において高く評価できる。
このうち、多文化家族支援法では韓国人男性と結婚して韓国に移住した外国人女性に対し、韓国語と韓国文化の理解教育はもちろんのこと、わが子の学習をサポートする母親としての在り方のアドバイスを行っている。
また生まれた子どもに対しては、学習支援だけに留まらず、母親の出身国の文化と言語に関する教育支援のほか、心理面でのカウンセリングを施すなど、細かいところまで行き届いたプログラムとなっている。
ところが日本生まれの韓国籍者(以下、在日韓国人)が韓国国内に移住した場合には、これらの支援から除外されている。これは、多文化家族支援法がその対象を韓国の内国人男性と結婚した移住外国人女性とその子どもだけに限定しているからであり、在日韓国人女性は外国人女性と同様に結婚で移住したとしても、韓国籍だという理由で対象外とされているのである。
しかし、在日韓国人は日本語を母語とし、日本の学校に通い日本国内でしか生活経験のない者が大多数である。つまり、韓国籍を持つ同じ国民とは言え、韓国語の使用や韓国文化の理解、生活習慣などにおいて、在日韓国人と内国人とでは相当の開きがある現実を勘案すべきなのである。
それは、在日韓国人女性が結婚して韓国に移住した場合、生活に不安を抱いたり、子育てに悩むという点においては、むしろ外国人女性の立場に近いからである。
ところで、在日韓国人が除外されている事例は何も多文化家族支援法に限ったことではない。除外は実は保育料支援や教員採用などの分野にも及んでいる。
保育料は満5歳までの乳幼児が受けられる公的支援であり、年齢によって金額が変わるものの現在、0歳児で月額40万6000ウォン、5歳児で月額22万ウォンが受給できる。
初・中・高等学校の教員採用については在日韓国人も免許取得が可能だが、採用の対象からは除外されているという矛盾がある。大学の語学教員に関しては、同じ海外同胞でも外国籍の中国朝鮮族や在米同胞は相当の人数が採用されているにもかかわらず、在日韓国人が不採用である点がいかにも不思議である。
中央団長名で意見書
保育料支援からの除外については、15年12月に本団が主催した「未来創造フォーラム」の中で明らかになった後、16年1月に呉公太中央団長名で保健福祉部長官宛の意見書を提出している。しかし、この時には同部からの反応は皆無であった。だが同年9月、姜恩姫女性家族部長官と呉団長とが懇談する機会があり、問題を長官に直接訴えたことによって状況が少しずつ動こうとしている。
姜長官の助言を受けて民団は同年12月6日、女性家族部宛に「大韓民国の各種支援制度からの在日韓国人除外実態是正要望」を提出した。その結果、早くも16日には同部から要望に対する回答が届いたほか、年末には雇用労働部と保健福祉部からも文書が届き、教育部からは近日中に回答するとの連絡があった。
次回は各部の回答内容について触れてみたい。
(2017.1.25 民団新聞)