掲載日 : [2023-04-19] 照会数 : 1800
「北送」批判で 総連から迫害、在日2世 呉文子さんが体験発表
[ シンポ参加者(前列右から5人目が呉文子さん) ]
北韓からの「帰り船」実現訴える
韓国東義大学校 「国際学術シンポ」
【釜山】「在日韓人の歴史と重層的表層」をテーマとする第21回国際学術シンポジウム(東義大学校東アジア研究所主催)が3月31日、釜山市の東義大学校であった。「北送」については『楽園の夢破れて』の著者・閔貴星さんを父に持つ在日2世の呉文子さんが「わたしの家族にとって、帰国事業とは」と題して報告した。
朝鮮総連中央本部で帰国協力会幹事の一人だった閔さんは1960年に「8・15朝鮮解放慶祝使節団」の一員として北韓に招待され、「地上の楽園」と真逆の現実を知る。日本に戻ると、朝鮮総連に対して、帰国希望者に北韓の現実をありのままに知らせるべきではないかと迫った。
しかし、朝鮮総連からは「反動」の烙印をおされ、激しく非難された。一時は「北に骨を埋めたい」まで願っていた閔さんは『楽園の夢破れて』を出版し、朝鮮総連と全面対決する。
閔さんへの攻撃は呉さんと結婚し、朝鮮大学校で歴史を担当していた李進熙さんにも及ぶ。李さんは「民族反逆者の娘婿」ということで自己批判、相互批判という「思想総括」を強いられた。呉さんも10年という長きにわたる親子の断絶を強いられた。苦しみぬいた末に夫妻は一時、北韓への「帰国」を決意したほど。しかし、閔さんは自らの命をかけてまで思いとどまらせた。
呉さんは「親族への圧力もしくは人質にとることで、批判勢力を黙殺したものであり、そうであるがゆえに、総連が現在でも存続している」と自らの家族を例に「北送」とは何かを振り返った。
最後に、北韓の地でいまも差別と監視に呻吟している友人・知人たちを念頭に北韓の民主化を訴えながら「帰国した人たちの家族が生きている間に『帰り船』を実現させなければならない」と訴えた。
呉さんは「私にとってはとても有意義なシンポでした。学術研究の場にふさわしいのかと心配したのですが、共感を得たようでほっとしています」と語った。
このほか、「関東大震災100周年‐朝鮮人虐殺の国家犯罪」と題して東京学芸大学の李修京教授が報告した。
(2023.4.19民団新聞)