掲載日 : [2023-05-24] 照会数 : 1384
北九州に根付く民族学級 若松中央小「韓国学級」
[ ケンガリを手に児童を指導する朴康秀さん ]
【福岡】北九州市立若松中央小学校(野口友加校長、318人)の民族学級「韓国学級」には4年生児童でつくる「五和サムル」がある。この名称は郷土芸能「五平太ばやし」と和太鼓、サムルノリを組み合わせたもの。コロナ禍で延び延びとなっていた4年ぶりの学習発表会を6月に控えており、「ランチルーム」で練習に取り組んでいる。
6月、「五和サムル」発表へ
若松はかつて筑豊で産出された石炭の一大積み出し港だった。「五平太」とは石炭のこと。船で運ぶ際に景気づけにヘリをたたいたのが始まりとされる。地元には保存会が組織されているほど。途中、景気づけに「それ よいよいやー」の合いの手が入る。
担当の民族講師は在日韓国人2世の朴康秀さん(59)。46人の児童一人ずつに目を配っての熱血指導は約2時間にわたった。ジャージでおおわれた背中を汗がぬらした。朴さんは「子どもたちが参加して心から楽しんでくれることを心がけている」という。
「韓国学級」は正規の教育課程に基づく「総合的な学習」の一環。カリキュラム「お隣りの国の韓国を知ろう」は朴さんが指導要領の範囲内で工夫している。教材はすべて手作り。全学年の国際理解授業を担う朴さんは「ゼロから作るところに面白さがある」と話す。
野口校長は「民族学級を通じて韓国ばかりか自国の文化も学べるところがすばらしい」と喜んでいる。北九州市教育委員会の岩田勇人指導主事も「民族学級が残っている学校は異文化理解の機会として貴重」と引き続き支援を続けていく考えだ。
この3年間、コロナで指導に制約がかかり、伝統の格闘技「シルム」どころか、手をつなぎあう「カンガンスルレ」も見合わせてきた。いまはやれることが少しずつ増えてきたという。
福岡県には公立小学校3校に民族学級が設置されている。すべて北九州市内だ。過去をさかのぼると多いときは12カ所の小・中学校に設置されていた。当時は在日1世が民族講師を担ってきたが、いまは2世に代替わりした。朴さんは福岡商銀勤務を経て韓国に1年間留学し、96年から若松小学校(当時)に非常勤講師として勤務する。
問題点は在籍する同胞児童の減少。民族学級のある3校で韓国・朝鮮籍を持つ在日子弟は数人。韓半島にルーツを持つ児童は潜在的にかなりの数に上るとみられるが、確認方法は困難だ。民族学級の行方は今後厳しくなるものとみられている。
朴さんは「魅力ある楽しい国際理解授業の創造と実践、学校や地域の行事への積極的な参加により、その学校と地域になくてはならない存在となれるよう模索していきたい」と話している。
(2023.5.24民団新聞)