掲載日 : [2023-06-07] 照会数 : 946
真相究明せずに100年 関東大震災、同胞虐殺「歴史の闇」
関東大震災時の不都合な真実から目を背けようとする日本政府の姿勢は100年前から変わっていないようだ。参議院内閣委員会での質疑に期待し、インターネット上で国会中継を見守った多くの在日同胞は失望したようだ。なかには「怒りを覚えた」という声も聞こえてきた。立憲民主党の杉尾秀哉参議院議員が5月23日、質問に立った。
まず、政府委員を通じて日本の中学、高校の教科書の多くが朝鮮人、中国人虐殺の事実を取り上げていることを政府委員を通じて認めさせた。さらに、「朝鮮人虐殺の背景には流言があり、3日には軍隊や警察も巻き込まれた」との記述がある政府の中央防災会議報告書(2008年)の内容を再確認するなどして、外堀を埋めていった。
同報告書は公的記録、公文書に基づいて記述されている。03年には日本弁護士連合会から謝罪と真相究明などを求める勧告も出ている。
杉尾議員が「過去の反省と民族差別の解消が大事」と迫ったのに対し、警察庁の楠芳伸官房長の答弁は「調査した限りでは政府内にその事実関係を把握することができる記録が見当たらない」というものだった。
谷公一国家公安委員長も「政府として新たな調査は考えていない」と断言した。
実はこの政府答弁は日本政府による決まり文句だ。2015年以降、複数の国会議員から計8回の質問主意書が提出されているが、その都度、同様の趣旨の回答が繰り返されてきた。さかのぼれば、当時の帝国議会でも「記録が見当たらない」「答えることは不可能」と述べている。
杉尾議員は「国会図書館には公文書が残っている。調査していないのではないか」「理解できない」と険しい表情で詰め寄った。「せめて、記録を調査した限りなどといわないで、これからちゃんとやりませんか。歴史の闇に葬るのではなく、もう一度しっかりと向き合い、謝罪すべきは謝罪してほしい。100年、これが最後ですよ」。
杉尾議員はまた再び質問すると通告して質疑を終えた。
「怒り収まらず」
在日2世の呉文子さん(東京都調布市)は「腹立たしい大臣の答弁にいかりが収まりません。しかしながら、100年ぶりの国会での質問に意義を感じたいと思います」と話していた。
(2023.6.7民団新聞)