掲載日 : [2008-07-16] 照会数 : 8643
国力の消耗座視できない 民団中央本部団長 鄭進
再躍進へ国民の結束を訴える
大韓民国の建国60周年をひと月後に控え、私は在日韓国民団の中央本部団長として、韓国国民と在日同胞を含む海外同胞のすべてが祖国韓国の現状に対する問題意識を共有し、過去60年の躍進に勝るとも劣らない新たな跳躍の60年を目指して一致結束するよう、衷心から呼びかけます。
歴史の汚点にも
本来であれば、建国60周年に向けた祝賀ムードが高まってしかるべき時期でありながら、それを敢えて打ち消すかのように、米国産牛肉の輸入再開問題に端を発した韓国の社会的混乱は、労働争議へと飛び火し、さらには国会機能の停止など政治的な混乱へと拡大しました。各国が韓国の行方に懸念を表明するなど、この騒乱は国際社会にまで衝撃を広げました。
李明博大統領は18代国会の開院にあたり、国民と議員に向けた「内憂外患を克服しともに前進しよう」との演説を行い、国民所得3万㌦時代を開いて快適な環境と充実した福祉を整え、生活の先進化を遂げるとともに、世界で堂々たる強国の地位を占めようと力強く訴え、今後の5年間がその成否にとって極めて重要であると力説しました。
さらに、大韓民国の60年は5000年におよぶ民族史においても、18世紀以降の世界史においても、最も成功した「近代化革命」の軌跡そのものであったとの評価に言及し、国家的危機には必ず結束してきた韓国国民の無限の底力に対する確信を表明しました。
切歯扼腕しつつも正常化を切に期待してきた私たちは、不屈の姿勢を内外に闡明したこの開院演説に強い共感を覚えました。
韓国は一流先進国への門前に到達しながら、足踏みを余儀なくされたまま、日本など先発先進国には追いつけず、中国、インドなどの新興国には追い上げられる苦しい立場にあります。しかも、国際社会は原油や食料の高騰、核やテロの拡散、そして地球温暖化など、要因が複雑に絡み合う危機に直面しており、新たな秩序づくりへの展望が開けないなか、生き残りをかけた無限競争に突入しているといって過言ではありません。
世界的な規模で押し寄せる苦境に立ち向かい、足踏み状態から大きく一歩を踏み出すには、国民がもつ力量の総結集が不可欠です。しかし、遺憾にもこの間の混乱事態は、韓国の国民力量を消耗させ、国際的な競争力と信用力を低下させました。対外依存度の高い韓国経済にとって大きな打撃です。経済的難局と政治的な葛藤をいたずらに拡大させ、一流先進国への可能性を自ら摘み取ることは、歴史の汚点となりかねません。
民団を中心とする在日同胞は、韓国経済の成長要因が乏しい時期に資本や技術、経営ノウハウを持ち込み、高度成長への足掛かりを築いただけでなく、セマウル運動への積極参与や郷土の社会資本整備に労苦を惜しみませんでした。祖国が存亡の危機に見舞われた6・25韓国戦争時には学徒義勇軍として参戦し、IMF外貨危機の際には外貨送金運動を展開しました。88年オリンピックや02年サッカーW杯大会には、巨額の誠金伝達など大規模な後援事業を展開し、その成功の喜びを分かち合いました。
貢献の自負かけ
私たちには、大韓民国の60年を国民の一員としてともに歩み、祖国が苦しい時ほど献身してきた自負があります。その自負からしても、韓国が混乱を続けて国力を疲弊させ、国際社会の無限競争時代に後れを取ることは座視できません。
国家のもつ潜在的活力の度合いは、国民のもつ熱望の蓄積量と同じであると言われます。私たちには、国家的にも民族的にも世界で類例のないほど蓄積された熱望があります。政府と国会の確固とした共生関係が回転軸となって、その国民的なエネルギーを統合し、一流先進国の建設に邁進されるよう願ってやみません。
私たちにはいま、大韓民国60年の輝かしい歴史を再照明し、そこから未来への自信を引き出しながらも、これまでの成功神話に決してあぐらをかくことなく、当面の内憂を克服して外患に立ち向かう隊列を整えるべきです。在日同胞も民団を中心に、この時代的な使命遂行の先頭に立つ決意を改めて明らかにするものです。
(2008.7.16 民団新聞)