掲載日 : [2008-07-16] 照会数 : 6231
李明博大統領の第18代国会開院演説 全文
[ 演説する李明博大統領 ] [ 金国会議長と握手する李明博大統領(左) ]
建国60年の誇り土台に
難局打開へ国民の力量総結集を
経済の再生は天命
先進国へ この5年が成否
李明博大統領の第18代国会開院演説(7月11日)の全文は次の通り。
尊敬する国民の皆様、そして金炯 国会議長と国会議員の皆様!
第18代国会の開院を全国民とともにうれしく思います。
そして国民の貴い選択を受けられた議員の皆様にお祝いの言葉を申し上げます。あわせて非常に重い大任を引き受けられた金炯 国会議長にお祝いを申し上げます。
大韓民国の主人は国民です。国会は国民を代表する崇高な機関です。国会の声はすなわち国民の声です。国会の力量がすなわち国民の力量です。 私は代議民主主義に基づいた民主憲法を守護する大統領として、国会に対する深い尊敬の念を表します。
最高の政治は国民の生活を楽にし、明日の希望を与えることだと考えます。この点は、この席にいらっしゃる議員の皆様と私と違わないと考えます。
議員の皆様の献身的で成功的な議政活動を祈ります。
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18代国会の意義と期待
尊敬する国民の皆様、そして議員の皆様!
今年は建国60年を迎える歴史的な年です。国会と憲法が誕生してからもまさに60年になりました。大韓民国軍が創設されて60年になる年でもあります。
最近、建国60周年記念委員会は大韓民国のこの60年を「5000年の韓半島の歴史でも、18世紀以来の世界史でも、最も成功した近代化革命」と規定しました。
そうです! 大韓民国60年史は絶え間ない挑戦と成就を通じて「発展の歴史」を築いてきました。
多くの屈曲と痛みがありましたが、建国と産業化、そして民主化を成し遂げ、奇跡をつくってきました。
私は、血と汗と涙で今日の韓国を培ってこられた国民の皆様に謹んで敬意を表します。
傲慢は警戒しなければなりませんが、自信は持たなければなりません。
世界が私たちの発展を注目しているのに、私たち自ら過去を否定する理由がありません。自らの歴史を否定する国民には未来がありません。肯定と発展の歴史観こそ、私たちを希望に満ちた未来に導く原動力です。
今は新しい60年を準備する時です。
世界は今、転換のうずの中にあります。世界化の中の統合と亀裂、情報化にともなう文化衝突、持続可能な環境をめぐる葛藤、資源獲得競争とテロとの戦争、頻発する自然災害と不確実性の増大など、21世紀の世界秩序はまだ揺れ動いています。
この文明史的転換期に、大韓民国はどこへ行かなければならないのでしょうか?
危険と後退が潜む出口を避けて、繁栄と発展が待つ出口を選択しなければなりません。先進化を成し遂げて、世界一流国家に向かう道を見つけなければなりません。
国民所得3万㌦時代を開き、快適な環境と能動的福祉の中に、生活の質の先進化を成し遂げなければなりません。韓半島平和の確固たる土台の上に世界の中の堂々とした強国として地位を占めなければなりません。
このような目標には、「君」と「私」はありえません。ただ「私たち」があるだけです。
第2次世界大戦以後独立した国家の中で、先進国に進入した国はないと言います。先進国の入り口で挫折して墜落した国も少なくありません。
そのためにこれからの5年が決定的に重要です。この5年が先進国入りの成否を決める重大な時期になるでしょう。
この歴史的課題を実現するのに第18代国会がその中心になって下さい。
生産的な競争と協力のもとに価値とビジョンを共有して、国民的力量を結集する国会になって下さい。誇らしい大韓民国の歴史の新しい章を開いて下さい。
365日議事堂に灯が灯り、国民のための政策が生産される「創造の殿堂」、叫び声の代わりに妥協の拍手が聞こえる「疎通の殿堂」、対立と葛藤、百家争鳴を融和させる「統合の殿堂」になるように願います。政府も国会を国政パートナーとして尊重し、対話政治を先んじて実践します。
国民の積極的な政治参加とインターネットの発達で、代議政治が挑戦を受けています。これに対しても、政府と国会は能動的に対処する必要があります。
このような変化と発展の姿を通じて、第18代国会が国民から最も愛される国会となることを期待します。
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岐路に立った大韓民国
尊敬する国民の皆様、そして議員の皆様!
今、私たちは内外の挑戦に直面しています。
対外的な経済条件が予想より早く悪くなっています。原油価と穀物価、原資材価格が急騰し、世界金融市場も相変わらず不安です。対外依存度が70%に達する私たちの経済は、その衝撃をそのまま受けています。
物価は上昇し、景気まで萎縮して、国民がどれくらい大変なのかよく知っています。
そのような中でも、私たちの社会は分裂と葛藤が深化しています。求心力より遠心力が大きくなっています。信頼が弱くなり、法と原則が無視されることも頻繁になっています。
この席ではっきりと申し上げたいと思います。「発展」と「統合」は、李明博政府の国政運営の二つの車輪です。
危機であるほど政府がしなければならないことは、苦痛を受ける庶民らをきめ細やかに保護して、国民の肯定的エネルギーを集めることです。統合なくして発展なく、発展なくして統合はありません。「発展」と「統合」の二つの車輪を力強く回すため、私と政府から新たに出発します。
最近の「牛肉問題」は私に多くの教えを与えました。時間がかかっても国民の目の高さで、国民とともにしてこそ成功できるということを深く悟りました。国民の声にさらに細心に耳を傾ける一方、法治の原則をしっかり守っていきます。
信頼こそ、この時代の最も大きい資産です。信頼がなければ経済も政治も成功できません。
国民の信頼を得ることに国政の中心を置きます。さらに低い姿勢で仕事をします。あわてず順々に国民の心をつかむようにします。
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安定中心の経済運用
尊敬する国民の皆様、そして議員の皆様!
私は経済を再生すると約束しました。経済の活力を生み出し、成長を通じて働き口を創り出すと約束しました。庶民と弱者も安心して暮らせる温かい社会をつくると申し上げました。私はこの約束を一時も忘れたことがありません。必ず守ります。
しかし今の状況は、川の流れに逆らって船を引っ張っていくように非常に難しい状況です。原油高で触発された急流に、じっとしていれば後ろに押し流されてしまいます。もう皆が力を集めて、前に進まなければならない時です。私も、私に与えられた天の命令である経済再生のために渾身の力を尽くします。
何よりも物価安定に力を注ぎます。庶民生活に負担になる公共料金の引き上げは最大限抑制します。石油製品と農水産物流通構造を改善して、消費者の負担を低くするようにします。物価を圧迫する金融、外国為替市場での要因も順次減らしていくようにします。
最も大きい苦痛を受けている庶民と社会的弱者のためには別途の細心の対策を講じます。国会の協力を得て、昨年の剰余金中10兆ウォン程度を民生安定に投入します。零細業者と小商工人、農漁民、畜産農家などを支援するのに使います。
企業も、このような時であるほど投資拡大と働き口創出に積極的に動いて下さい。すでに多くの中小企業が「一企業一雇用」を増やすのに参加しています。大企業も下半期に55兆ウォンを投資すると発表しました。ありがたいことです。
各界のこのような努力が、来年後半期には経済回復の成果に表れることを確信します。
不動産市場の安定基調は、一寸の揺れもないでしょう。しかし、地方をはじめとする不動産市場の取り引きが深刻に萎縮しています。不動産価格の安定を損わない範囲で、取り引きの活性化と市場機能の正常化を図らなければなりません。
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「緑色成長時代」を開かねばならない
短期的な対策だけで、私たちの経済を再生させるには不十分です。
私は去る7月8、9の2日間、日本・洞爺湖で開かれたG8首脳会談に参加して帰ってきました。この会議の主関心事は、原油高と気候変動でした。
原油高と気候変動は、私たちの産業構造と生活全般のパラダイム変化を要求しています。
日本も1970年代に私たちと同じように石油ショックを体験しました。しかし、早くエネルギー政策の枠組みを変えて、経済を成長させながらも、石油依存度を20%も減らしました。エネルギー自主開発率も20%に引き上げました。
しかし、私たちのエネルギー構造は過去の姿と大きく変わリませんでした。エネルギー自主開発率は4・2%にすぎず、エネルギー効率も日本の3分の1水準です。短期的な問題解決に汲々として、未来に対する備えを怠った結果です。
気候変動に対する対応もまた緊要です。遠くを見て徹底して対処しなければなりません。世界社会の共同努力の先頭に立たなければなりません。
油を少なく使い、炭素を少なく排出する持続可能な成長をしなければなりません。温室ガスを減縮しながらも、経済が成長する「緑色成長」時代を開かなければなりません。
企業自らも高効率・親環境構造へ体質を転換しなければなりません。
エネルギー効率を上げるための技術開発は、新しい市場と働き口を創り出し、経済成長を導く新しい動力になるでしょう。政府は、これを制度的に後押しするために「気候変化基本法」制定を推進します。
国民各自も一滴の油でも惜しみ、生活の中で節約を実践しなければなりません。乗用車使用を自制して電力消費を減らすなど、可能なすべての努力を傾けなければなりません。
私は就任当初から資源外交の重要性をずっと強調してきました。わが国は資源開発に遅く関わりましたが、現在活発な交渉をしています。早晩、可視的な成果があると期待します。
これから50年、100年を見通すエネルギーインフラを必ず構築します。エネルギー自主開発率を20%まで引き上げ、低炭素社会に向けたエネルギー高効率体系の基盤を固めます。
私たちのように資源が不足した国では、科学技術は生存と繁栄の源泉です。創造的科学技術は21世紀経済成長の核心動力です。基礎科学と源泉技術に対する投資を先進国水準に増やします。
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規制改革と公企業の先進化 韓米FTA
規制改革と公企業の先進化は、先進国へ跳躍するために必ずなさねばならないことです。この改革の課題は徹底して準備し、たゆまず推進してまいります。
規制改革こそ、お金を使わずとも投資や仕事を増やす一番の良い方法です。新しい政府はすでに規制改革の青写真を準備いたしました。徹底した現場の確認を経て、投資を妨げる規制を最大限の迅速さをもって緩和するようにいたします。
公共部門の先進化はこれ以上遅らせるわけにはまいりません。公企業の支援に税金が毎年20兆ウォンほどが使われております。国民の大多数も改革と変化を望んでおります。民間がもっとうまくやれる領域は民間に任せるのが正しいと思います。電気、水道、健康保険など民間に任せられない領域も、経営の効率化をしなければなりません。サービスの質も高めなければなりません。
私は「経済が苦しいときには人を減らさない」という原則を持っています。雇用安定を十分に考慮しながら経営の効率化を推進してまいります。
尊敬する議員の皆様!
規制改革も公企業の先進化も、議員の皆様と国民の支持がなければやり遂げることはできません。これから規制改革と関連した約200件の法案が順次、国会に提出されることになります。最大限迅速に立法化できますよう議員皆様の積極的な協力をお願いします。
機会はいつも危機の顔してやってくると申します。危機に陥った私たちの経済が逃してはならない機会の一つが、まさに韓米FTAなのです。国家の将来を考える大局的な決断をもって韓米FTAの批准を早急に処理して下さることを心よりお願いいたします。
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法秩序を堅固に
南北協力は「実践の時代」
社会を統合するための積極的な努力
尊敬する国民の皆様、そして議員の皆様!
「統合」は暮らしやすい国をつくるための必須条件です。階層間の格差を縮め、地域間の不均衡を解消してゆかねばなりません。
経済が苦しいからといって、庶民と社会的弱者のための福祉政策が後退してはならないのであります。政府は脆弱階層に対する社会安全網を強化して、自活を促進してまいります。
低所得者層に対する医療支援を強化し、個人個人にあった形の保育サービスを拡大してまいります。今年導入された老人長期療養保険制度も、つまずくことなく施行されるようにしていきます。
「ニュースタート2008政策」の一つとして128万の金融疎外者に対する支援政策を推進しております。これから、金融疎外者、全体で780万人に対しても多様な手段を通じ自活できるようにする方案を講じてまいりたいと思います。
労使安定なくしては現在の経済の難局を打開することはできません。今年前半期に労使和合宣言が昨年に比べて2倍以上増加するなど、労使共生の努力が拡散しています。このような雰囲気を定着させ、新しい労使文化を確立しなければなりません。
私は、非正規職の勤労者の苦しさを誰よりもよくわかっております。議論となっている非正規職保護法は労使双方の見解をすべて反映させ、補完、改定してまいります。
学生とその保護者たちの一番の大きな心配事は私教育費と教育格差です。特に学費の負担に耐えられない庶民たちの苦しさは、大きなものがあります。
お金がないために勉強ができないということだけは、絶対にあってはならないというのが私の信念です。教育によって、貧しさの連鎖を断ち切ることができる確実な基盤を整えていきます。
私教育費の負担を減らすためには、公教育を生かさねばなりません。公教育に自律と創意が溢れるようにしなければなりません。政府はすでに大学入試自律化に続き、小中学校の自律化のために一段階の措置を講じました。自律と創意の教育は誰にとっても公正で多様な機会を与え、適性と特技を生かせるものです。
私たちの子どもたちが、世界化時代に各分野の人材として成長することができるようにしようというものです。
尊敬する議員の皆様!
食品の安全に対する国民の関心がとても高まっています。食物の問題こそ「国民健康安保」という次元から対処してまいります。
政府は国務総理の傘下に民間が参与する「国民健康対策機構」を構成し、食物の安全に油断がないようにいたします。
新しい政府は地方の発展が経済再生のための近道だと固く信じております。外に向けて、経済の世界化に対応し、内に向かっては、地方分権に符合する地域発展政策を推進してまいります。政府は特性化された地域発展を通じ、地方の経済力を高めます。広域経済圏を形成し、発展の潜在力を極大化してまいります。
革新都市、企業都市のような地域成長拠点を特色を持たせ育成し、国際科学ビジネスベルト、セマングム開発等、地域戦略事業を力強く推進してまいります。
政府は名実がともなう地方自治の具現と、地域経済の活性化のために、地方に果敢に権限を委譲いたします。
中央政府に属している特別地方行政機関を徐々に地方に移転し、地方自治団体の予算の自律性を高めて生きます。地域経済活動の成果が地方の税収に反映されるよう、地方税制の改編も積極的に検討いたします。政府は自ら努力し、協力する地域を集中的に支援いたします。
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意識の先進化と信頼社会
尊敬する議員の皆様!
私たちの社会は、無形の社会的資本である信頼の蓄積が大きく不足しています。
法と秩序が正しくしっかりしていなければ、信頼の芽は育ちません。政府は、法秩序を守る人にはより多くの自由と権利がもたらされるという原則を確固と掲げてまいります。
先進社会は、合理性と市民的徳性が支配する社会です。感情にいたずらに揺らぎ、無礼と無秩序が乱舞する社会は決して先進社会になることができません。不正確な情報を拡散させ、社会不安を煽る「情報伝染病」も警戒の対象です。
お互いを尊重して、理解する寛容と配慮の精神が根付かねばなりません。寛容と配慮は「対立と分裂の時代」を超え、「和合と同伴の時代」へと進むための貴重なはしごです。
このような意識の先進化は、政府の努力だけでは力不足です。
経済界、宗教界、教育界など社会の各分野が力を合わさなければなりません。
国会もこのような「意識の先進化」の流れがいたるところで波打つことができるよう、先頭に立っていただけるよう期待いたします。
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共生と共栄の道
尊敬する国民、そして議員の皆様!
私はこの場でもう一度、はっきりと申し上げます。私たちの対北政策は北韓の非核化を最優先にしながら、南と北、両者の利益になる共生と共栄の道を開拓してゆくものです。韓半島の進展した和解と協力のためには、北の核の解決が先決課題です。
最近、北韓が核申告書を提出し、6者会談が再稼働しながら、非核化の実質的進展のための重要な歩みを始めました。
私たち政府は、これからも北韓の完全な非核化のために6者会談当事国とともにすべての努力を傾注するものです。非核化の進展と一緒に、実質的な南北協力が活発になるのであり、ともに繁栄する韓半島時代も開けるのです。
これらのために北韓に提議いたします。
南北当局の全面的な対話が再開されなければなりません。過去、南北間で合意された7・4共同声明、南北基本合意書、非核化共同宣言、6・15共同宣言、10・4頂上宣言をどのように履行していくのかについて、北側と真摯に協議する用意があります。
合わせて、南北間の人道的協力推進を提議いたします。
政府は同胞愛と人道的見地から、北韓の食糧難を緩和し、住民たちの苦痛を和らげるために、協力する準備をしております。
国軍捕虜と離散家族の問題、拉北者問題も解決せねばなりません。国軍捕虜や離散家族の一世世代は、いまや70〜80代に差し掛かっております。この方たちが別れ別れとなった家族たちと自由に往来し、夢に見た故郷に戻ってこられるようにするのは、南北韓、みんなの倫理的責務です。
南北関係も今や新しい思考、新しい方向が切実に必要であります。私たちは互恵の精神に基づき「宣言の時代」を超え、「実践の時代」に進んでゆかねばなりません。
特定の政権という次元ではなく、民族の将来という観点から南北関係をつくってゆかねばなりません。
このような次元から、国会の党派を超えた協力と国民的共感を基礎に、統一政策を推進いたします。
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内憂外患を減らし先進一流国家に
尊敬する国民の皆様!
今、私たちは内憂外患に見舞われていると言えます。外患は世界が共通に経験しており、避ける道はありませんが、内憂は私たちが進んで減らすことができます。内憂を減らしてこそ外患をうまく克服することができます。
厳しい時であればあるほど、私たちは力を合わせ克服した経験をもっています。私たちみんなが力を合わせたならば、外患も恐れることはありません。
私は、私たち国民の無限の底力を信じます。大韓民国の無限の可能性を確信します。
大韓民国の歴史を左右する先進化の入り口から今日、第18代の国家が開院しました。私たちは、時代的な責務を一緒に分かち合っていく同伴者です。歴史の審判をともに受ける運命共同体です。
私たちの政治を振り返れば、多くの葛藤がありましたが、国家的な危機状況においてはいつでも一つになりました。一緒に力を合わせ、この歴史の峠を越えていきましょう。
建国60年以後の新しい60年を開きながら、仕事をよくする政府、国民に最も奉仕する国会を私たちがともにつくっていきましょう。
ありがとうございました。
(2008.7.16 民団新聞)