「丹南と扶余」結ぶ人と人 韓日の縁を背景に介護問題、伝統工芸の継承問題を扱った、犬童一利監督(30)の映画「つむぐもの」(配給・宣伝=マジックアワー)が、19日から有楽町スバル座(東京・千代田区)を皮切りに全国で順次公開される。芸歴50年、映画初主演の石倉三郎さんと韓国映画「息もできない」で高い評価を得た女優、キム・コッピさんの演技が光る。言葉も文化も価値観も違う2人が出会い、介護を通して心を通わせる物語のテーマは「人と人」。犬童監督は「希望を発信する映画にしたかった」と思いを語る。
介護の本質知る
人の心をつなぐこと 舞台は、2006年から友好交流都市である福井県丹南地域と百済最後の都である扶余郡。丹南地域の和紙や漆器、織物などの伝統産業は、古代、百済の渡来人によってもたらされたと言われる、縁の深い間柄だ。
本来ならば会うはずのない頑固な和紙職人の剛生(石倉三郎)と、無職になり扶余からやって来た韓国人女性のヨナ(キム・コッピ)が出会った瞬間から、運命の歯車が動き出す。「早く帰れ、ここはお前の働けるところじゃない」「誰が働いてやるか、くそじじぃ」。剛生の心ない言葉に、ヨナが応酬する場面は度肝を抜かれる。
「つむぐもの」は、丹南地域と扶余を舞台にした映画を作りたいという話から始まった。昨年1月、犬童監督はフランス映画「愛アムール」(ミヒャエル・ハネケ監督)を見たことから企画を思いつく。「愛…」は、病に倒れた妻を介護する老夫婦の愛を描いた作品。 それまで介護も祖父母と暮らした経験もない犬童監督は、実家の両親と見たこの映画を通して介護の厳しい現実を知る。「衝撃を受けた。人ごとではないと思い、介護の映画を作りたいと思った」
昨年2月、犬童監督は大学時代からの親友で脚本家、守口悠介さんとともにロケ地を見るため、初めて福井と韓国を訪ねた。
韓国では「韓日友好 私は映画を制作する者です」と韓国語で書いたプラカードを持ってソウルの明洞と扶余で、親指と親指をつける「指キッス」を多くの市民らと行った。
「幸せな気持ちになった。反日、反韓と言われているときだったけれど、皆笑顔でやってくれた」。この指キッスは犬童監督が考案したもので、重要なシーンで使われている。
撮影前、犬童監督はいろいろな介護施設を取材し、実際に1日働いた。また、くさか里樹さんの介護漫画『ヘルプマン』(全27巻)を守口さんとともに読み、介護に対する知識を深めていく。
介護業界は今、ネガティブな印象をもたれているという。賃金が安い、重労働などという理由からだ。
ある介護士から「おむつを替えたり、排せつや食事の介助などは作業のひとつでしかない。本質的にはその人が最期まで生きていくことの手助けをすることだ」という話を聞いた。犬童監督はこのとき、介護士のあるべき姿を知った。
映画のなかで、素人のヨナが剛生の世話をする場面がある。ヨナの対応は剛生の気持ちをほぐし、周囲の人間の頑なな心を溶かしていく。撮影に協力した介護業界の人たちから「これは介護映画じゃないよね。人と人の映画だ」と言われた。「人と人ということが介護にもつながる。そう言われたことはすごく嬉しかった」
扶余に戻ったヨナの心には日本があって剛生がいる。犬童監督はこの映画がきっけとなり、指キッスや「つむぐ」という言葉がはやって欲しいと思っている。 Best specialist
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「つむぐというのは元々、まゆの繊維を何本かより合わせてひとすじの糸を作るという意味だけど、それは人と人、国と国にも使える言葉だと思っている。偏見や差別はない方がいい。そういう意味でもこの映画に可能性を感じてほしい」
ものがたり 妻に先立たれて一人暮らしの和紙職人、剛生の元に、ワーキングホリデーでやってきた韓国人のヨナ。当初は日本で越前和紙作りの手伝いをするはずだったが、職人の剛生が脳腫瘍で倒れてしまい、なんと介護をすることに。しかし、剛生は誰にも心を開かず、偏見にまみれた悪態をついてばかり。それでも勝ち気なヨナはひるむことなくぶつかっていく、やがて剛生の気持ちにも思いもよらぬ変化が訪れる。
公式HP(http://tsumugumono.com/)
(2016.3.16 民団新聞)