掲載日 : [2016-09-14] 照会数 : 5276
外国籍が援軍に全国で200人超…担い手少ない消防団員
共同通信社全国自治体調査から
少子高齢化などにより担い手の確保が難しくなっている消防団員に、外国籍住民の進出が著しい。共同通信が6月、全国1741の市区町村と47都道府県を対象に実施した外国人住民に関するアンケート調査によれば、少なくとも200人を超える。消防職員は公権力の行使を伴うことから外国人はなれないというのが一般的な運用。だが、非常勤特別職の地方公務員にあたる消防団員については法律上の位置付けがあいまいで微妙。国が法的に支えることが必要との指摘も出ている。
「公権力の行使」に風穴か
共同通信のアンケート調査は全国で人口減少・労働力不足が深刻化するなか、自治体は外国籍住民をどう受け入れているのか、「多文化共生」の観点からその実情と対応策を探るのが目的。回答率は9割を超えた。
外国人消防団員がいると回答したのは、1613市区町村のうち9%の147自治体に上った。都道府県別に見ると兵庫が26%と最多。茨城と静岡も20%を超えていた。地震で被災した熊本県南阿蘇村でもカナダ人団員が確認されている。また、1100余りの自治体は「現在はいないが任用可能」と答えており、今後も増加しそうな勢い。
消防団とは消防組織法に基づき、市町村に設置されている組織。消防署とともに地域で消火や災害の救助時の救助活動、避難誘導などを行う。団員は別に本業を持ちつつ、定期的な訓練で技能を磨き、急な出動に備えている。団員資格は一般的にその市町村に住んでいるか通勤している18歳以上。出動時には報酬、手当などの支給がある。
消防団員は消防吏員と同様、私有地への立ち入りや家屋の破壊をともなう消火活動にあたる。これらは公権力の行使を伴うが、総務省消防庁は外国人の任用について「公務員に関する基本原則、団員の権限を踏まえて適切に対処することが必要」と述べるにとどまっている。いわば「地域ごとに考えて」と丸投げしているのが実情。
人口減は現実として外国人の任用拡大を迫っているが、法的な位置付けの曖昧さが自治体に任用をためらわせているのも否めないようだ。火を消すという行為に日本人も外国人もない。日本人の消防団が高齢化、少数化しているなか、外国人の存在は力強い援軍となることだろう。
外国籍常勤公務員689人と増加
共同通信の自治体アンケートによれば、地方自治体に勤める外国籍の常勤公務員は少なくとも689人いることが分かった。日本政府の1988年の集計では539人だったため、3割近く増えた計算だ。内訳は市区町村が494人、都道府県が195人だった。
一般事務職で外国人を採用する「国籍要件」があるとした回答は市区町村の42%、679。国籍要件がないとしたのは492市町村で、うち280は管理職昇格などの制限もないと答えた。教員や医師、保育士などの職種で国籍要件を設定している市区町村の比率は22〜32%だった。
(2016.9.14 民団新聞)