掲載日 : [2016-04-20] 照会数 : 5532
ヘイトスピーチ禁止条項の明記を求める決議文
日本社会において猛威を振るうヘイトスピーチ関連法案の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」が4月8日、自民・公明両党から与党案として参議院に提出された。
在日同胞を標的とした「差別扇動」であるヘイトスピーチを根絶するために本団は多種多様な活動を展開してきた。300を超える地方自治体での法的規制を求める意見書採択、一昨年のジュネーブでの国連人種差別撤廃委員会への代表団派遣、全国各地での各種シンポジウム、学習会、集会の開催などである。そしてヘイトスピーチを許さないと言う世論の高まりを受け、昨年提出済みの野党法案との調整の上、各会派一致の上で今国会での成立を目指すとした状況を作り出してきた。
しかしながら提出された与党法案について、ヘイトスピーチによって自らの尊厳を傷つけられた当事者の立場からは、極めて深い失望を禁じ得ない。罰則規定を設けない、いわゆる理念法であるにしてもヘイトスピーチが違法であるという明確な規定が不在だからである。前文に「不当な差別的言動は許されないことを宣言する」としつつも、「不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない」と単なる努力義務の明記にとどまっている。
更にヘイトスピーチの温床とも言うべきインターネット上での対策に関しても触れられていない。この内容で日本各地を席巻するヘイトスピーチの暴力に対していかに対抗できるのか、実効性を持ち得るのか、はなはだ疑問である。ヘイトスピーチによって直接の被害を被ってきた者としては、到底、承服できるものではない。
先に批准している人種差別撤廃条約の水準・精神を踏まえての真摯な審議の上、禁止条項を明記するなど、ヘイトスピーチの根絶に向けた実効性のある法案成立を本団は強く望むものである。
以上、決議する。
2016年4月13日
在日本大韓民国民団
全国地方団長・中央傘下団体長会議参加者一同
(2016.4.20 民団新聞)