掲載日 : [2020-03-28] 照会数 : 6182
「似ているが違う」「違うのに似ている」…「潮香るくらしの韓日比較文化誌」
[ ワカメ採取用のテベ(手前)と日本のコンブ漁具であるイソブネの比較。右は展示代表の松田睦彦准教授 ]
国立歴史民俗博物館企画展
韓国国立民俗博物館と共同研究
【千葉】〝似ているけれど、どこか違う〟〝違うけれど、どこか似ている〟‐韓日の海をめぐる食文化、儀礼、漁法などの類似と相違に迫る大規模な国際企画展示が佐倉市の国立歴史民俗博物館企画展示室A・Bで開催されている。テーマは「昆布とミヨク(わかめ)‐潮香るくらしの日韓比較文化誌」。3部構成。韓国国立民俗博物館との間で2015年から始まった第3期交流の成果を公開した。
海産物のうまみが味の基礎として重要な役割を果たしているのは、和食、韓食とも共通している。和食ではカツオやコンブのだしがなければ味噌汁一杯飲めないし、韓食ではエビやカタクチイワシの塩辛、タチウオの魚醤などがなければキムチを漬けることもできない。第1部は和食を支える「だしの文化」と韓食を支える「塩辛の文化」について製法や製品、その歴史についてひもといた。
韓国の塩辛は冷蔵・冷凍保存技術が十分に発達していなかった時代の生活の知恵として生み出された。日本でも近代までは一度に大量にとれる海産物の保存方法として重宝されてきたが、近世に入ってだしや醤油の文化にとってかわられていったようだ。
双方とも海産物が海水の塩をまとった清浄な食べものととらえる考え方は同じ。神に供え、食べて心身の穢れをはらう。韓国ではワカメが産育儀礼に欠かせない。日本では東日本のサケ、西日本ではブリが時間の区切りを示すハレの食卓を飾る。
第2部「海に生きる」では韓国のワカメ漁と日本のコンブ漁を比較した。見ものは韓国国立民俗博物館蔵のワカメ採取用テベ(筏)と、日本のコンブ漁具であるイソブネの展示。いずれも箱メガネで水中をみながら船の上から採取するというもの。
第3部「海を越える」では先人たちが主体的に相手の文化を受け入れてきた「交流の証」にスポットをあてた。
19世紀当時、韓半島に出漁した日本の海女は上半身裸だった。現在のようにシャツを着るようになったのは、肌をさらすことを忌避する韓半島での経験があったとされる。済州ヘニョ(海女)の磯着は実用性に優れ日本でもスタンダードなものとして定着していった。房総半島には「チョウセン」と呼ばれる磯着が残されている。
「交流の証」として日本式の「明太子」も取り上げた。これは韓国の塩辛「ミョンランジョッ」を調味液に漬け込んでつくったもので、「塩辛文化」と「だし文化」の見事な融合といえよう。
展示プロジェクト委員の松田睦彦(国立歴史民俗博物館民俗研究系准教授)は「私たち日本の民俗を研究する者としては、韓国や中国といった窓を通して日本を見るということが非常に重要かつ有効であるということが今回の企画をとおして実感できた」と話している。
5月17日まで。新型コロナウイルス感染症対策のため現在は休館中。
(2020.03.27 民団新聞)