来月、東京とソウルで交流プロジェクト
日本演出者協会(和田喜夫理事長)とソウル演劇協会(朴章烈会長)主催の第2回「日韓演劇作品交流プロジェクト‐演劇でつながろう」が4月、東京とソウルで開かれる。1992年から韓国との演劇交流を続けてきた日本演出者協会が、12年の「第34回ソウル演劇祭」でソウル演劇協会とさらなる交流を深めるための協定書を交わした。同プロジェクトはその一環で行われる交流事業。6月の韓日国交正常化50周年を控え、韓日関係は冷え込んだままだが、和田さんは「演劇を通じて、交流の大切さを両国市民にアピールしたい」と話す。
互いの大切さ気づかせたい
「日本と韓国の演劇統括団体がお互いに交流しているぞ、という事業をやったら、両国の市民が気づくきっかけになるのでは」
12年にソウル演劇協会と交わした協定書には、長年にわたる双方の交流を多くの人たちに知ってもらいたいとの思いが込められている。
13年5月には、東北の被災地を支援する日韓合同バザーを行い、14年3・4月には、両国の主催する演出家コンクールの最優秀賞受賞者の作品をお互いの国で上演する第1回の「日韓演劇作品交流プロジェクト‐演劇でつながろう」を東京とソウルで実施した。
この4月、東京・新宿で開く第2回について「1回目に来てくれた方、協力してくれたスタッフは非常に喜んでいる」。
昨年、国際交流基金からこの事業について「両国にとって重要なことをやっている」との連絡を受け、今回、助成金が下りた。和田さんは「周りの目が少し変わった」と感じている。
日本演出者協会は92年から韓国演劇協会とともに「日韓演劇人会議」を始め、隔年でお互いの国でシンポジウムや演劇を行うなど、多くの文化事業を手がけてきた。
だが「劇団間の交流は続いているのに、そのことは世間に伝わっていない」。
そこで思いついたのが市民を巻き込む形の「日韓演劇フェスティバル」(09年東京、12年東京・大阪・福岡開催)だった。両国の戯曲の上演、シンポジウムのほか、音楽や絵画なども紹介した。
和田さんは大学卒業後、文学座養成所に入所し、在日同胞の仲間と出会った。在日に対する思いがあった和田さんはフェスティバルの開催のとき「僕にも考えがあった。在日の人がここにいないのでは日韓交流にならない」。
在日の演劇人や詩人をはじめ、芸能関係者などに声をかけ、日本、韓国、在日の関係を軸にしたフェスティバルは成功裏に終わった。
和田さんは「韓国の演劇人から学ぶことがある」と話す。社会的な仕事をしているという強い意識、何かを伝えたいという身体表現‐。昨年の「日韓演劇作品交流…」のとき、韓国の作品を観た評論家が「これだけの技法で、こういうテーマの演劇を抱えていたのか」と驚いていたという。
「つまり韓国の演劇を見もせずにイメージを決めつけている。たとえ触れていても偏見があると見えないんです、人間って。僕のなかで、その偏見をどう変えるかということが大きくある」。
そこで重要なのは「人間関係」だと強調する。韓日国交正常化50周年の今年は、「もう一回冷静に話し合っていく年になればいい」。
和田さんたちには、お互いに培ってきた信頼関係がある。これからも演劇を通じて、両国の市民たちに交流の大切さを伝えていく。
第2回では、家族をテーマにした劇団昌世の「雪害木」(作・演出=白碩鉉)を上演する。
4月2・3日19時30分、4日13時(交流会は15時から)、5日14時。会場はタイニイアリス。
チケット予約は、日本演出者協会(03・5909・3074)、当日の予約はサイトウ(080・3580・3103)。
(2015.3.18 民団新聞)