「食」テーマにネットで結び
民団活性化にも一役
韓食世界化事業を担う事業体としていち早く韓国政府の認定を受けた民団韓食ネット協議会。「食」をテーマにネットワーク作りを進めれば、民団支部や婦人会の活性化にもつながるという。同協議会の朴健市会長が寄稿した。
民団韓食ネット協議会は09年6月、キムチネット協議会の名称を変えるとともに、会員対象もキムチ業者から焼肉店や韓国家庭料理店に拡大して新たに発足した。
同年2月、韓国農林水産食品部(農食品部)と民団中央が業務協力議定書を締結したことがきっかけだった。双方は政府がスタートさせた韓食世界化事業の一環として、日本において①韓国農水産物と韓国食文化の普及②同胞飲食店のネットワーク作りをすすめていくことで合意した。この業務協力議定書の内容を実際に推進する事業体として、協議会を作りかえたのだ。
認定一番の日本
協議会は当初、農食品部をはじめとする関係機関との認定交渉や事業計画などの擦り合わせに労力を費やさざるを得なかった。しかし、同年10月には既存の韓国食材、マッコリなどに加えて、韓国で最高級といわれる慶尚北道の英陽唐辛子、そして南海産のニンニクの共同購入を実現、同胞飲食店に高品質の食材をより安く提供する事業を本格的に推進できるようになった。
昨年は、共同購入のほかにも多彩な事業を展開した。韓食世界化事業を担う事業体として、世界主要9地域中、一番最初に政府の認定を受けたのを機に、協議会の事業計画に対する支援を受け、10、11月には調理師のためのシェフスクール、経営者セミナー、ホールスタッフセミナーを同時並行的に、それぞれ12回ずつ開催した。講師は韓国、在日同胞、日本の第一線で活躍している専門家が担当、そのレベルの高さは参加者からも好評で、ぜひ今後とも継続して欲しいとの声があがった。
長野県での4回にわたるキムジャン講習会とキムジャンキムチセットフェアも反響を呼んだ。特にフェアは好評で、当初予定の1000セットを上回る注文を受けた。白菜はもちろん、ヤンニョム材料もすべて韓国最高級のものを使用したこのフェア、締切後も、美味しいとの評判を聞き込んだ同胞やキムチ業者から注文が相次ぎ、本場・本物のキムチの人気がいかに高いかを改めて実感させられた。
本協議会が今年なすべきことは山積している。その最大のものは、「韓食の世界化」に見合った事業展開、合わせて会員の拡大を図り全国的なネットワークを作り上げていくことだ。この二つの課題を推進していく上で、焼肉店や韓国家庭料理店ばかりでなく、各団員と民団支部も大きな要になると考えている。
同時並行的にすすめていくが、まず飲食店向けには、韓国料理のレベルアップと韓国食材普及のために次のような事業を実施していく方針だ。
昨年、成功裏に終えることができたシェフスクールや各種セミナーを定期化する。特に、調理師向けには韓国の伝統飲食研究所とタイアップして、研修制度を開設するとともに、地方の伝統料理修得のための研修旅行などを実施したい。
この計画は、化学調味料と万能調味料コチュジャンに依存するあまり、画一的な味しか提供できていない韓国家庭料理店に、本来の調味料や料理法を学ぶ調理師を育成し、店と料理をレベルアップするのが目的だ。韓食を世界5大料理入りさせるには、店舗作りや接客サービスばかりでなく、料理のレベルアップが欠かせない。
韓国食材の普及には、現在の品目をさらに拡充させ、より高品質で安全なものをより安く提供していく方針だ。韓国には世界の有名ブランド以上の健康的で高品質の農産物が数多くあることを知ってほしい。
協議会ではすでに韓国の伝統酒振興院、キムチ協会、淳昌ジャン類研究所、伝統産業振興協会などと業務提携を締結、今後とも各地のブランド品生産者や農協との業務提携が予定されており、高品質で安全な農産物を安定供給できる体制が整いつつある。
こうした事業を展開しながら、HPや機関誌「韓食文化」などで広報を強化していけば、飲食店向け食材普及とネットワーク作りはそれほど難しくなく、早い時期に会員1000店舗を確保していく方針だ。
問題は、団員と民団支部をいかにネットワーク化するか。民団社会はすでに、主軸世代であった2世も高齢化し、次代を担うべき3・4世を含め既存のネットワークは脆弱化しつつある。新たな発想の一つとして、「食」をテーマに新しいネットワークの創造を提案したい。
幼少の頃から食べ慣れた料理、味というものは一生ついて回り、忘れられるものではない。団員の家庭であれば、キムチをはじめ韓食は日常的に食卓に上り、冠婚葬祭の場、あるいは民団本・支部の会合やイベントでも韓国料理は欠かせない存在となっている。
この「食」を日常的に購入し、また供給できるシステムを民団社会においてネットワーク化したいと考えている。
昨年、キムジャンキムチセットフェアを実施した際、ある支部では協議会の商品を使ってキムジャン講習会を開催し、若い女性、主婦が数多く参加し大いに喜ばれた。また、韓国料理講習会は各地で開催され、どこも満杯になるほど盛況だ。「韓食」をテーマにすれば、多くの人が集まり喜ばれるということの証明だろう。
支部に利益還元
協議会では、各地の料理講習会に講師を派遣する一方、民団支部を通して韓国食材を日常的に供給するための商品案内を作り、それを支部が団員に配布、注文を受け付けさえすれば、キムジャンフェアで各支部に10%還元したように、支部に手数料をバックするシステムを作り上げたいと考えている。
まず、キムジャン講習会を成功させた支部をモデル支部として育成し、その成功事例を全国の支部に広く知らせ全国ネットを構築していくつもりだ。
また、各地の婦人会が開催している韓国料理講習会を大いに活用し連携したいと考えている。講習会参加者が学んだ料理を家族に提供するだけでなく、自分なりにアレンジした料理の腕前を発表する場を設けることにより、料理作りのレベルアップを図れるだけでなく、食材の普及にもつなげていけるからだ。
協議会では今年、昨年成功させたキムジャンフェスティバルを大々的なイベントにするほか、全国料理大会を開催することにより、韓国料理に対する関心と話題をさらに盛り上げていきたいと思っている。
全国の団員、民団支部の積極的な協力を切に望みたい。
(2011.1.1 民団新聞)