掲載日 : [2011-01-01] 照会数 : 13351
<座談会>在日の幸せ願う〞仲人さん“ 情熱傾け民団ブライダル
[ 李圭燮さん(左)、朴裕植さん
] [ 尹明太さん(左)、李相亥さん ]
民団兵庫本部副団長 コリアンブライダル 兵庫‐マンナム
李圭燮
民団山口本部 山口ブライダル委員会 会長
李相亥
青年会東京本部会長 カップリングパーティー企画担当
朴裕植
青年会大阪本部副会長 大阪コリアブライダルセンター
尹明太
同胞同士の結婚を望む人たちにとって、出会いの場を提供している民団のブライダルパーティーはこの間、重要な役割を担ってきた。だが、時代の流れとともに親や当事者の結婚観の変化が大きく、現場を支える実務者たちも頭を悩ませている。ブライダル事業が抱える課題とは何か。今後の展望について、現場を担当する民団兵庫本部の李圭燮副団長、民団山口本部・山口ブライダル委員会の李相亥会長、青年会東京本部の朴裕植会長、青年会大阪本部の尹明太副会長が語り合った。
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独身男性ヤーイ
成婚率低い悩み データベース整えないと
−−各地のブライダル事業の現状から
女性殺到相手探し
李(相) 山口県では年に2回、開催しています。2009年12月の第1回のとき、各30人を募集したところ女性は殺到したので、待っていただきました。でも男性は20人しか集められず、残りを集めるのも必死で各方面に協力していただいたような感じです。
男性は日本人女性との結婚が多くなっているようです。女性は大学を出て、きちんとした職業に就いているけど、30歳くらいになると結婚相手がなかなか見つからず、皆さん困っています。でも、第1回目に参加した方が今年、結婚式を挙げることになりました。
李(圭) 兵庫に関しては、本部がやる前に尼崎市の商工会議所が8回、婦人会主催が4回、今回の兵庫本部主催が1回。都合13回で延べ1200人から1300人の方たちに参加していただきましたが、結婚実績は1組です。
結婚願う気持ちを
大きな違いは今まではパーティーをやって、後は自由に付き合ってくださいとしてきました。でも成婚率が低いということもあり、皆さん同様、結婚を最終ゴールとしてほしいと思っています。私たちは愛知や、神奈川で行っているブライダルパーティーを見に行って勉強もしましたが、ほぼ同じような悩みですね。
会費未納8割にも
−−同胞が多く住む大阪は、どのような状況ですか
尹 成婚者がなかなか正直に答えてくれません。こちらに申請せずに結婚していたというパターンが多いので、成婚率として上がらない。成婚料の問題かなと思い、男女とも10万円だったのを5万円に下げても、電話もいただけません。何かそういうシステム作りをもっと、しっかりしていかないといけないというのはある。
あと問題点は、全体の8割くらいの方が年会費を全くといっていいほど、納めてくれない状況があります。
朴 青年会では18歳から30歳までの連帯親睦事業として毎年、クリスマスパーティーを行っています。30歳以上は参加できないのかなど、いろいろな問い合わせがきますが、青年会は年齢制限という問題があります。
婦人会が頼りです
昨年4月にブライダルパーティーを開きました。これは30歳以上の在日の男女に出会える場を提供するべきではないかと私自身も思いまして、婦人会東京本部と共同主催でやることになりました。当初は何をどうすればいいか分からず、日本のブライダル専門会社のインターネットもリサーチして、システムを学びました。
当日は男女25人ずつ参加し、10組のカップルができました。ただ、その後のフォローについては、婦人会東京本部の会長と話をしていますが、やはり参加者を集めることとフォローすることに関しては難しいので、そちらは婦人会にお任せして、企画とシステムに関しての主導は青年会が担っていくのがいいのではと伝えています。
地方と有機的に
−−成婚率が低いという点について
李(圭) 一つはデータベース登録件数があまりにも少ない。民間で上手くいっているところは、データベースは2万とか3万、10万持っています。例えば女性から年収500万円、身長180㌢とかの希望条件で検索すると、すぐデータが出てくる。情報はいったん、オープンにしながらも、上がってきた情報は完全にクローズして、自分のところでコントロールをする。
そして中心メンバーのアジュンマ(仲介人)が「あなた、そんな自分の好き勝手いったらだめよ」とか「そこはちょっと我慢しなさい」と自分の娘みたいに叱ったり、男性にはできないきめ細やかな人生相談もしている。
センターあったら
そこは年間20組とか30組とかを成婚させていて、婚姻成立費用の50万とか100万円を出してでも、吸い寄せられるように人が行くんです。それは成婚率が高いからです。民団のブライダルもデータベースをしっかり構築しないと難しいと思う。
それにセンターみたいなものを作り、センターと地方が有機的に動いていけるようなシステムを構築しないと、私たちはそういうつもりはなくても、その場限りで終わってしまう傾向があり得る。
ある種のコーディネーターも必要です。要するに中心となるアジュンマです。それをお願いするのは婦人会しかない。そういう人がそこに思いをしっかり持っていくことが大事なのでは。もう一つ言うと、稼ぎにはならなくても、いろいろな状況の方がいらっしゃるので、それによって多少の見返りがあるような形にしないと、きれいごとだけでは続かないのでは。
−−それは専担者ということですか
李(圭) そうではなくて、その案件はこういうふうにお願いしますとか、それは私がやりますっていうコーディネーターです。そういう人が、どのくらいいるかということです。
結局は成婚率を高める根本的な条件だなと。僕らには逆立ちしてもできないですよ。
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生半可じゃできぬ
大事にしたい集い 民族意識高める場所にも
−−この事業は生半可な気持ちではできない 尹 言ってみたら結婚の面倒を見るわけです。李副団長がおっしゃったみたいに、その道のスペシャリストを作るくらいの気持ちがないと成婚率は上がらないと思います。
営利目的じゃなく
李(相) 私たちは営利を目的にしていませんし、在日の後世を育てるために一つでも、在日のために残したいと思ってやっています。
−−時代とともに、若い親世代や当事者の結婚感も変わってきている。また、幼いころからの家庭における民族教育などの問題も指摘されていますが
尹 困りますよね。その歳になるまで自分の考えが確立しているなかで、ま逆のことを言われても対応できないと思います。かと言って、小さいときから自由にさせる部分と、反対にどうやって民族意識を高めていけばいいのか。
朴 オリニキャンプにかかわって6年くらい経ちました。中高生になっても、年に1回くらい場を設けています。その子たちが大きくなったら学生会、次は青年会、そして青年商工会と、集まりの場を段階的に作っていくものも確かにあります。そのなかで在日のブライダルパーティーというのは、在日同胞と会える場だという考え方で特殊性があると、僕のなかで実感があったので、これはやるべきだと思いました。
ブライダルという言葉を縮めて、「婚活」という最近流行りの言葉を使ったチラシとかを作りました。そのあたりは僕も考えているんですが、青年会のなかでも出会いもあるし、それで恋愛に発展することもあります。そういう場はあるんですが、全体的に見て、自分の人生の過程で、どれくらいの影響が出てくるかを考えなければいけない。つまり、結婚の後は育児、育児の後は老後の話とか、そういう場ですよね。
李(相) 急にぽっと入ってくるのは難しいですね。だから少しでも皆さんのように、若い方たちを在日の集まる場所に寄せたいというのは、お金儲けよりも大事だと思います。
李(圭) 私は同胞事業、子ども事業を長くやってきました。中学生とかはなかなか難しい。僕らの次の世代である40、50代の人が、子どものために何かするっていうのは随分、期待してたんですけどね。もちろん、僕らの問題もあるんですど、尻切れとんぼになりました。
トータルプランで
朴 青年会、民団社会の事業に取りかかって8、9年くらいしか経っていませんが、一つだけ分かったことがあります。僕らの人生のなかでは日本社会に生きようが、どこに生きようがいろいろなキーワードがあります。進学、就職、結婚、育児など、自分の人生で必ず経験しなければいけないものです。
民団の今までの事業には、必ず何か食い込める要素があると思っています。育児だったらオリニ事業として民族性、結婚に関しては在日同胞の出会いの場、就職だったら就職活動に関するセミナーとか、そういう発想を僕自身が持つように努力しています。
自分の人生を生きていくなかで、必要なキーワードが必ず在日と絡むような事業の起こし方を考えていかないといけない。それがもしかしたらトータルプランニングではないかと思うんです。
李(圭) トータル的に見ればもちろん、そうですよ。オリニ事業では青年会のオリニ土曜学校も定着してますし、集大成としてのオリニジャンボリーがあります。それとブライダル事業ともう一つ僕らが考えているのは介護だとか、高齢者事業です。お年寄りということは、子どもがいて、お孫さんがいるから民団に自然に人が集まってきたりする大きな事業になるので、そういう一体のイベントをやっていかなければいけないというのはある。
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えーっ 年収3千万
安定指向まざまざ 学歴・年収など細心の注意
−−実際に民団の事業のなかにも、年に1回で終わっているものがある。回数を増やしてほしいという声もあります
李(相) パーティーに出てくるのは嫁に行けないからとか、男性はしょうがないから来るとかのイメージがありますが、私はそうじゃないと言います。皆さんはこの集まりを大事にしたいんです。
今、年に2回のブライダルパーティーを一生懸命頑張っています。今年から1回にしようかなと随分、悩みました。でも2回でずっとコンスタントに続けたいと思っています。それはずっと私がしなくても、次に婦人会でできる方につないでいきたい。
でも会長という責任において、毎日、電話をしたり、お茶を飲む席を作ったりと、それも全部自費です。お見合いを希望する方には1万円ずついただき、きちんとした履歴書をお出しします。もし、この人に会いたいというときには、私が許可を得て両方に教えていきます。つないでもらいたいという気持ちでやっています。
また、参加者全員の名刺を作って、配るようにしています。名刺には学歴と名前、収入は出しますが、携帯番号とかは教えません。
女性は男性に何を求めるかということです。30代くらいの女性は、外見だけではないですよね。女性というのは結婚すると、まず、共働きをしようという考えはないと思います。収入のある男性のところに行きたいと考えるのは、安定した生活を求めているからでしょう。だから、収入がポイントになるのかなと思うことはあります。
尹 年収の話ですけど、大阪も最初は年収を記入していたんです。でもある時から省きました。他ではクレームみたいなのはありますか。
李(相) クレームは今のところないですね。男女ともに書くも書かないのも自由です。なかには年収700万円という方もいました。だから、すごいなこの年収はって飛びつくからといって、決まるわけではないですしね。
あまりに現実的な
尹 以前、パーティーをやったなかで一人だけ、年収3千万円の方がいました。仕事を頑張っているというのは、すごく、魅力的な部分だと思いますけど、かと言って女性全員がその男性に飛び着くとは思わないじゃないですか。でも集計を見たら、その男性だけ指名されていたんですよ。それを見たときに人って何だろうと。こんなにも現実的かと。
確かにお金があったらベストですよね。でも、お金だけで人を見られないじゃないですか。
朴 普通の青年会での一般の集まりに比べたら皆さん、お気持ちに正直に動いていますね。あと、仕事の業種を気にされる方が多かったですね。
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少ないリピーター
専門家育てないと 李圭燮
会員制度に疑問も 朴裕植
少々の赤字は覚悟 李相亥
答え焦らず着実に 尹明太
−−民団としてやるべきことは
李(圭) 先ほど、ブライダルのコーディネーターの話をしましたが、どの事業も専門性が必要です。民団の特徴は一人、5足くらいのわらじをはいています。でも民団は致し方なく、そうせざるを得ない部分があるので、結局は優先順位を考えてバランスを取って、何か一つやるときに最後の仕上がりまでしっかりと、工程を引いてやりきってしまうという事業スタイルが少ない。
だから僕はそれを徹底したい。ほかのことをちょっと止めてもこの事業は形のあるところまで必ず、仕上げようという事業スタイルを作っていく。そのときに問題になるのは専門性のあるスタッフと、その方たちの身分保障です。
そういう人材が民団に来て、一緒に仕事をしているのに、ちょっと何かがあって解雇したら、民団が自分の首を絞めるのと一緒です。そういう人材を継続的に身分保障していけるようなシステムを作っていかないと。でもそうは言ってもなかなか難しいでしょうね。
若い人も分担して
私どもが有り難いのは、婦人会会長が、ご自分のライフワークだということを話されている。身銭を切ってでも、自分の足を引きずってでもやると。しかも会長は分かっていて、若い人が中心で、この仕事をいろいろな部分で分担してくれなければと話しています。
私たち民団とタイアップして、このブライダル事業一つにしても、事業の完遂と結果をきちんと出す。そのなかで人材や、コーディネーターなども育てる事業を成すような形にしないと、どうしても自己満足になってしまう。
李(相) 周りが案内のチラシをこんなに刷らなくてもいいと言っているのに、うちの副団長はこだわっています。送料もかかりますが、副団長に言わせれば宣伝のためにしよう、民団がやっているということを浸透させたいという気持ちです。だから団長もお金がかかってもやりましょうと。後の人は続くかは分からないけど、今の団長の間は頑張ろうと話しています。
−−過去であれば、例えば全国団長会議に行ったときに各団長と一生懸命、情報交換を行ったと思う。今はそういうものが稀薄になっている気がします
李(圭) 周辺環境は厳しいです。兵庫は16支部ありますが、冠婚葬祭が濃密に残っているところは16のうち3つくらいです。それでもそういうものがだんだん、稀薄になって止めようのない方向に進んでいるのが現実です。
場所だけ設ければ
朴 話は違いますが、僕はブライダル事業はデビュー1年目で、まだまだ分からないことが多いのも事実です。会員制度は大切だと思いますが、場所だけ提供すれば、それ以上は追っかけなくてもいいのではと思っています。あえてそこは考えずに、定期的に行うことによって出会いの場が増えていけばいいと思っていますが。
尹 先ほど、年会費の納入問題について話しましたが、パーティーは年6回行っています。1カ月に2回くらい、年齢別でやりたいのですが、そこまで時間がないです。
李(圭) 今も話にありましたが、1回は年会費、入会費をいただいた。2回目からは呼べど応じずで、年会費を納めてくれない、リピートがない。それは形だけが残っているだけで、実態としては崩壊している。私どもは試行錯誤しているので、今回から会員制にしました。こういう話そのものは、言われたほうはこの間まではいらなかったのにという話になる。ブライダルでも入会金の高いところはありますよ。
それなのに、民団が会費を集めると、金儲けのためにやるんですかと、何人もから電話がありました。それなので非常に難しい。民間に多くの人たちが行っているのは、対価があるからです。だからそういうものがない民団から、例え年会費が5千円だ、8千円だといわれても、どれだけリピーターが来るでしょうか。
朴 もし、会費制にするなら、月2回はイベントをセッティングしないといけないですね。
交通費の面倒まで
李(相) 山口の場合は会費をいただくとか、会員制にするというのはちょっと、難しいと思います。
昔、支部の団長がやったことがあるそうですが、ほとんど消滅です。それはお金を払ってまではしないという考えです。私自身としては団長とも、今日話したことも相談しますが、お金をいただこうとかそういうことではないんです。これは事業のなかで、少しくらいの赤字は、民団で活動費として出しましょうということです。
ただ、私個人でするものは請求はしませんが、あるとき、広島の女性と福島の男性がお見合いをすることになりました。女性の方が会いたいというので、広島まで来てくださいと言うことでした。男性に話したら、じゃ、交通費を下さいと。私は自分で出そうかと思いましたが、そしたら副団長が自分で出すと。
だけど、これをずっと続けるということは、コーヒー代とか、自分の使ったものはいいけど、お見合いのセットのときには、やっぱり規定として、交通費はいただこうということになりました。そしたら男性の方からクレームがつきました。行かないと。
とても悲しかったです。私がいただくわけではないんですよ。この事業は本当に民団の活動のなかで、寄付をいただいて、赤字にならないように続けているんです。でもいろいろなことがあってビックリです。会員制は、ちょっと無理かなと思います。
李(圭) 兵庫の場合は婦人会長の顔で寄付を集めてきました。会長の考えは分かります。寄付を集めて、8千円のところを5千円にしたら皆さん、来やすいと。いわば親心です。でも事業という側面で見れば、すでに無理があります。
今回、会員制にしたら減るだろうと思ったら、会費を払っても登録しますという人が65人いました。今年、次のステップにいったときに、会費を払っても意味がある、と思ってもらうようにしないといけない。
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やりがいある事業
一人でも多く出会いを 多様性にも対応できるよう
−−参加者の年齢設定は
朴 年齢が上の方もそうですが、下の年齢も問題だと思っています。20代前半で本気で結婚に取り組む方がどれくらいいるのかと思います。今回、下は25歳にしましたが、最年少が27歳でした。これが現実的な数字なのかなと。上は40歳までにしましたが、歳があまり離れすぎると出会いとしては、歳の差も世代の差も感じます。
李(相) でも40歳くらいは普通だと思います。女性は35から38歳くらいまでいます。一昨年は40歳の方もいました。ずっと仕事をしている方です。
年齢制限必要かな
尹 一人でも多くの同胞にと思えば、年齢制限しないほうがいいのでは。恋愛で結ばれたカップルですが、27歳の女性が53歳の男性と結婚しました。年齢ってあまり関係ないように思います。 李(圭) 今回、会議の結果、年齢制限はつけませんでした。でもアンケートを見たら男性は年齢が高いとか、雰囲気が壊れたとか、これも現実なんだと。
−−今後の抱負は
尹 最初、やり始めたときは目の前の成婚率とか、カップル数とかに目がいってたけど、長い目で見ると、僕たちが10年後、20年後にすごく影響を与えると思います。そういうふうに考えていきながら、答えを焦らずにやって行こうと思っています。
朴 僕は1回目なので、皆さんがこれはこういうものでということを前提に話をされているのを強く感じています。シングルマザーの出会いでも、その多様性に対応できるようになればと僕自身は思っています。 李(圭) 宿題はたくさんありますけど、パートナーに恵まれ、意味ある事業を作り上げていくという嬉しい気持ちで、これからも皆さんと一緒に、一生懸命にやっていきたい。
李(相) 今、皆さんの話を聞きましたが、私は少し、恵まれていると思います。民団が主催で私を会長にして、そうしてやってくれるというのが。お金はなるたけ負担をかけないようにやっていきたいと思いますけど、一人でもたくさんの在日と出会える場所を作ってあげたいと願っていますので、今後も頑張っていきたいと思っています。
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ニーズ把握しっかり
結婚相手は ぜひ同胞と 求める人に応えて
民団愛知ブライダルセンター 金栄一さん
座談会では兵庫、山口、東京、大阪のブライダル状況について話を聞いた。ほかの地域でも共通する問題があるのか、民団愛知ブライダルセンターの金栄一さんに話を聞いた。
在日3世が結婚する時代にあって、まだまだ民団のブライダル事業に対する需要は大きいように思える。ただ、広報の方法にまだ問題があるのか、「ブライダル事業を民団がやっていることを知らなかった」という声もよく聞こえてくる。
また在日同胞の日本国籍取得が広がるなか、「それでも在日同胞と結婚したい」「韓国にルーツを持つ人と結婚したい」という声も少なくなく、本当に必要なことは何か、求められていることは何かを探っている状況だ。
同胞の相手を探すために、ブライダルの会員になられる方、またその親は、そのこだわりを非常に強く持っている印象がある。だが、どの国籍でも構わないと考える2世世代の親も非常に多いのは事実であり、それが3世ともなると、そのこだわりは皆無と言っても過言ではない。その対象は日本人ばかりでなく、まさに「どの国でも良い」という考え方もあり、時代の流れだと思う。
そもそも出会う機会が少ない在日同胞を結婚相手として探すことは、非常に苦労することであり、あまりにもそのこだわりが大きすぎ、婚期を逃している現状も多く目にしているので、必ずしも同胞同士での結婚が正しいとは言えない。
しかし、そのこだわりを持っている人のためにこそ、民団のブライダルが存在していると思う。
家庭で民族教育を
民族意識については、通名を使って現代を生きている在日同胞に、その原因が象徴されている。例えば、民団のオリニ事業に参加したときに本名を使っていたとしてもそれは一時の話、終わってしまえば元通りの生活に戻るので、せっかく事業の中で養われた民族意識も消えてしまう。
家庭内での民族意識を高める教育が必要であるが、親の世代の意識がすでにないため、その教育はできない現状だ。現在も過去も結婚相手には、探偵をつけてまでその人物の由来を探ろうとする傾向があるので、通名で日本人と同じように、まるで韓国人ということを隠すかのように暮らしていたとしても、その時になればお互い苦労する。
早めに子どもには在日であるという意識を植え付け、それでも日本人と、あるいは違う国籍の人と双方が承知の上で結婚するならば、それは仕方のないこと。突然在日と結婚しなさいという指示をするよりは、幼いころから意識を高めてやれば、本人も幸せになれる。
急務の問題としては先にも申し上げたように、現在、在日同胞が結婚に対してどのような意識を持っているか、民団のブライダル事業に何を求めているかを研究する必要がある。
ブライダルパーティーひとつでも、ただ同じことを同じように繰り返しているのは自己満足にすぎない。在日同胞の需要があってこそ成り立つブライダル事業。その需要に応えられなければ民団のブライダル事業は必要ないも同然である。
人生決める大仕事
そのためには会員の声をくまなく拾い上げ、活かしていかなければならない。人材的にも経済的にもその方法は現在の民団では厳しいが、このブライダル事業は、人の人生を変えてしまうほど非常に大きな仕事であり、誰からも感謝される事業である。
民団は全力でその要求に応えていく必要があり、その結果によって民団離れの解消にも繋がるのではないだろうか。
(2011.1.1 民団新聞)