掲載日 : [2007-09-12] 照会数 : 6679
フラッシュ同胞企業人(12) 交通安全の靴で特許
[ 1933年済州市生まれ。49年に渡日。法政大学中退。73年美健交易設立(静岡市)。民団静岡県本部顧問。子ども2男2女、孫5人。 ]
健康のための履き物を追求
美健交易の金大喜社長
足は〞第2の心臓〟と呼ばれる。健康維持に極めて大切な部分で、足によく合った靴を選ぶことが重要だ。
健康サンダルからリハビリ用シューズまでさまざまな履き物を提供してきた。
「ほかと同じものを作っていたのではさばけない。次から次へと新しい商品にチャレンジしてきた」
東京でゴムを材料に工場を営んでいた伯父を頼り渡日したのが49年。伯父のところで働きながら法政大学に通ったが、苦学の末に3年で中退した。
独立しようと、60年に履物業者の多い静岡にやって来た。業者が120社を数え、「なんとか商売になるだろう」と考えたからだ。
売れた健康商品
最初はゴム底を作りサンダル業者に納めていたが、しだいに業者が減っていった。そこで73年に美健交易を設立し、「自分で天然ゴムを使った健康サンダルを開発した。天然ゴムを材料に健康サンダルを製造したのは、静岡県では初めて。生協を通じて全国ネットで販売すると、よく売れた」という。
ところが、履き物業界の競争は厳しく、売れる商品があれば、すぐに類似品が出現する。最近は安価な中国製品に押され、店をたたむ業者が後を絶たない。
安価なビニル製に比べて原料の天然ゴムは高く、美健交易も太刀打ちできない。06年度売上額は約5億円だが、全盛期と比べるとかなり落ち込んだ。社員は約18人。中国商品の品質が改善されたので、3年前に一部を中国に生産シフトした。
業界不振の中で継続してこれたのは、時代にマッチした商品を相次いで提案してきたからだ。美脚づくりのためのストレッチサンダル、女性に好評の静電気追放機能付きサンダル、O脚対応のサンダル、衝撃吸収靴、超軽量靴など、開発した商品は数え切れない。
「カネもうけより、モノをつくるのが好きだった。だから、つくることの苦労を感じたことはなかった。ただし、商品は品質が勝負。こだわりがなければできない」と強調する。「仕事が趣味」と語るほど、頭の中は、新商品のことばかりだ。
県警が開発依頼
シニア向けの軽い履き物を主力商品にしていたころ、静岡県警から交通安全対策用「光る靴」の開発を依頼された。高齢者用を手がけていたことから、白羽の矢が当たったのだ。
どのような方向から光が当たっても光源に向かってまっすぐ反射するのを「再帰(さいき)反射」というが、この反射材を靴底の周囲に縫い込むと、ドライバーからはよく光って見える。「10足近い試作品を作った。暗い場所で目立たせる一方、デザインを損なってはいけない点に苦心した」と語る。
3年前に警察の肝いりで、この反射材つき交通安全シューズの特許を取った。県下の高齢者に普及させた結果、交通事故が減少した。夜、老人が路上で転倒し、動けなくなったとき、通行人がピカピカ光るのに気づき、救助された例もあり、反射材シューズに対する評価は高まりつつある。
「この反射材シューズは100㍍前から光って見えるので、高齢者だけでなく、ドライバーにも喜ばれている。高齢者は年々増える一方なので、交通安全協会を通じて全国に普及させたい」と意気込んでいる。
(2007.9.12 民団新聞)