掲載日 : [2007-11-08] 照会数 : 5680
イルボンで出会いのエッセイ<2> 金益見
自画自賛よ、消えてくれー
先日、高校で講演をした。講演終了後、何人かの高校生と話をする機会があった。
大学進学の悩みから、どうしたら宗教や国籍の違いによる差別はなくなるのかといったことまで、みんな悩んでいる。悩みに大きいも小さいもない。
自分の抱えるものを、今日会ったばかりの私に伝えてくれた彼、彼女たちの純粋さや真剣さが清々しかった。
そんななか、最後に尋ねてきた女の子がいた。彼女は、恥ずかしそうに自分の書いた作文を私に見せてくれた。
そこには、在日だといういうことを隠して生きなさいという祖父母の思いと、帰化はしたくないという自身の思いの間で悩む彼女のことが書かれてあった。
私は本名で生きていきたいし、この先、帰化をするつもりもない。だからといって、私の考えを彼女に押し付けることはできない。悩んだ結果、私はこう言った。
「この先、どんな選択をしても、それはその時あなたが一番正しいと思った答えだから、何も否定しなくていいんだよ。お爺ちゃんやお婆ちゃんが在日であることを隠すようにいうのは、自分たちのしてきた苦労を孫のあなたにさせたくないからだと思うの。みんなあなたが幸せになることを一番望んでいるんだから、感謝しながら自由に生きればいいんだよ」
すると、彼女は「はい!」と元気よく頷き、私も私で、我ながらいい受け答えができたな!やったぜ!と思っていた。その後、将来の夢や恋の話をし、もうそろそろ帰ろうかと思ったころ、彼女が「えっと、今日来たのはですね…」とおずおずと話し始めた。
「この作文を元に、今度大学で面接があるんですけど、何を聞かれると思いますか?」。彼女が作文を見せてくれたのは、悩みを相談するためではなく、大学受験の面接のヒントが欲しかったのだ!!
その時に初めて意味がわかった私は、穴に入りたくなった。さっきの自画自賛よ、消えてくれー!!(恥)
でも、彼女が悩みを将来に結びつける形で外に出していることを知って、「あ、強くていい感じ」と思った。
ちゃんと自分で自分を幸せな方向に持っていける子だと思ったのだ。
あー、それにしても恥ずかしかったー。
(2007.11.7 民団新聞)