掲載日 : [2007-11-08] 照会数 : 5399
<布帳馬車>公表のタイミング
韓国政府は30日、73年8月に発生した「金大中氏拉致事件」について、日本の主権を侵害した事実を認め謝罪した。「過去事件の真相調査委員会」が当時の韓国中央情報部(KCIA)による犯行と断定したのを受けたものだ。
韓日対立が国交断絶寸前まで先鋭化したものを、二度の政治決着で封印した事件であった。過ちは正され、真相も公表されねばならない。しかし、報告書は予想外の新事実を明らかにしたのではなく、「真相」を真相として確定したに過ぎない。公表はもっと早くても、遅くてもよかった。
韓国大統領選挙が近づいている。事件当時の朴正煕大統領の長女、槿恵氏が重きを成す野党ハンナラ党への攻撃の一環か、との見方も広がった。先の南北首脳会談にも、選挙向けパフォーマンスだとの冷めた反応がつきまとう。
もう一つ解せないことがある。金氏は「どれだけ失望したか」と政治決着に応じた日本政府を改めて非難した。被害者として当然の感情である。であれば大統領時代、日本人を大量に拉致した北韓に対して融和一本ではなく、日本人や韓国人の拉致被害者や家族をもう少しおもんぱかる姿勢があってもよかったのではないか。
加害者のトップである金正日国防委員長との歴史的な会談によって、ノーベル平和賞を受賞した金氏には、期待も大きかった。今も対北融和に熱心であり、独自のパイプを持っているものと推察される。拉致解決に一肌脱いで欲しいものだ。(A)
(2007.11.7 民団新聞)