掲載日 : [2007-11-28] 照会数 : 5692
<Life>生き甲斐はボランティアの中に
趙玉順さん
「自分が楽しむためなんです」
「今、この年齢になって、こうやって充実した時間が送れるということが嬉しい」。子育てが一段落した40歳から、ボランティア活動を続けてきた趙玉順さん(55、東京・品川区)。
同胞デイサービスセンター「東京トラジ会」で高齢者体操を指導するほか、日本人高齢者の介護予防体操や話し相手、そして全盲で小学6年生の少年の音声ガイドなどを務める。複数の活動をしながらも本人は「全然、苦ではありません」と楽しそう。
そんな趙さんにも戸惑いを感じた経験がある。東京都指定の知的障害者・児ガイドヘルパー養成講座受講後に紹介されたのが先の少年だ。少年の生活を支援するプロジェクトが9年前に発足した。10人以上のメンバーが交替で支える。趙さんは少年が3年生のときに出会って以来、1週間に1、2度は行動をともにする。
少年は一つのことに夢中になると、てこでも動かなくなる。例えばバスの揺れがお気に入りで、しがみついて降りようとしない。説得する趙さんと、嫌がる少年との間で何度も同じ行為が繰り返されてきた。だが「それまで自分だけの世界だったのが、少しずつ広がっている」という嬉しい発見もある。「一緒にいると癒されます。優しさや純粋さなど、彼から学ぶことは多いです」
子育てが落ちついたとき、「自分が存在する意味」について考えた。「結婚前も仕事をしていなかったし、私には何もありませんでした。でも子どもたちにはお母さん、これをやっているよというものを見せたいと思っていました」
社会経験のない自分に何ができるのか。趙さんの生き甲斐探しが始まった。考えた末に40歳で同区ボランティアセンターに登録。目の不自由な高齢者に付き添う外出ガイドとして、社会活動の第一歩を踏み出した。その後、ホームヘルパー2級の資格も取得した。接する人たちの笑顔が何よりも嬉しいと話す。「人のためにやるという気持ちはありません。充実しているし、自分がいきいきしていられるんです」
趙さんの趣味は本を読むことだ。以前、読み聞かせのボランティアをしたいと朗読の講習も受講した。先月には当時の仲間たちと「サークルこだま」を立ち上げた。今後、朗読の勉強を重ねて盲学校や、本に触れる機会のなかった同胞高齢者の集う施設などで朗読したいと張り切っている。
今「何回も読んで極めたい」と話すのは、レオ・バスカーリア作の「葉っぱのフレディー」だ。葉の一生が瑞々しく描かれている。「人の人生と同じなんです。命は続いていくという内容です」。「やっと自分のやりたいことを見つけた」と話す趙さんの夢は広がっている。
(2007.11.28 民団新聞)