掲載日 : [2007-11-14] 照会数 : 7109
イルボンで出会いのエッセイ<3> 金益見(07.11.08)
在日コリアンの特権なの
私が生まれ育った大阪の生野区という街は、韓国と日本が、生活と密着しながら共存している。そういう所で長く住んでいると、自分が社会ではマイノリティであることなどすぐに忘れてしまう。
そんな私が、在日コリアンであることを一番強く意識する時は、新しく同胞と出会った時だ。初対面でもすぐに親しくなれる。それが在日コリアンのとても大きな特権ではないかと思う。
私はまきずし大作戦の関係で、面白そうな人がいればどこへでも足を延ばして会いに行く。すると今では、各地にオッパやオンニが沢山できた。
そんななか、東京に行くと、用事がなくても会いに行くオッパがいる。それが姜昌秀さんだ。
昌秀さんは、講談社の人気漫画雑誌『モーニング』の敏腕編集者さんだ。まきずしを漫画で展開していこう!と決めた時に知人を通して紹介してもらった。
情熱だけを片手に、突然訪れた私に、昌秀さんはまずご飯を食べさせてくれた。貧乏学生でろくなものを食べていなかった私の胃に、なんだか温かいものが広がったのを今でもよく覚えている(ちなみにその時食べたのは鍋料理)。
丁寧にていねいに話を聞いてくれた後、とても辛辣なコメントをしてくれる昌秀さんは、クールに熱い頼れるオッパだ。昌秀さんが大阪へ来た時は、お子さんと一緒に我が家に遊びに来てくれた。こういう風に書くと、まるで長年のつきあいがあるように見えるかも知れないが、そうではない。最初から、昌秀さんは頼れるオッパのような存在だった。
一度、昌秀さんに何故こんなに親切にしてくれるのかを聞いたことがある。すると、昌秀さんは笑ってこう答えた。
「それは益見が同胞だからだよ。兄弟みたいなものじゃないか」
その時私は、「ああ、在日でよかったな。この人と仲良くなれて嬉しいな」と、改めて自分の国籍を特別なものだと感じて嬉しくなった。
出会いのエッセイを書くにあたって昌秀さんにメールをもらった。そのメールはとても素敵な言葉で締めくくられていた。「益見が、自分よりも若い同胞に対して〞君にはたくさんの味方がいるんだ〟ということをたくさんたくさん伝えてくれることを期待しています」
(2007.11.14 民団新聞)