掲載日 : [2007-11-08] 照会数 : 7009
パンソリの魅力日本でも 安聖民さんの想い
[ パンソリを歌う安聖民さん ]
今年5月、韓国全羅北道南原市で開催された「春香国楽大典」にパンソリで出場し、「海外同胞賞‐特別賞」を受賞した在日韓国人3世の安聖民さん(41・大阪市生野区)。00年から7年間、夏休みなどを利用して渡韓。重要無形文化財第5号パンソリ「水宮歌」保有者候補の南海星さんに師事し、パンソリを修得した。現在、大阪・生野区を拠点にパンソリ、民謡、チャングなど文化教室での指導や、公演活動を精力的に行っている。
7年間、母国に通った成果「子弟らへ伝え継ぐ」
国楽大典で海外同胞賞
春香国楽大典「海外同胞賞‐特別賞」の受賞は、01年開催の第1回亀尾全国国楽大会で受賞した奨励賞に次ぐものになった。「7年間、韓国に通い続けた成果ですね」と喜びを噛みしめながら話す。
安さんとパンソリの出会いは関西大学在学中までさかのぼる。生野民族文化祭で恒例のマダン劇に魅せられ、毎年参加していたときに偶然、耳にしたのがパンソリのテープだった。「初めて聞いたとき衝撃的な感動を覚えました」と当時を振り返る。
大学卒業後、東大阪市立太平寺小学校で民族学級の講師として充実した日々を送ったが、パンソリを聞いたときの感動を忘れることができなかったと当時を振り返る。
「日本で習おうにもパンソリの教室はありませんでした。民族講師として子どもたちの指導にあたるか、文化活動を優先するのかで随分、悩みました」
98年に同小学校退職後、パンソリを歌いたい一心で韓国に留学。1年4カ月余を光州市で暮らし、最初のパンソリの先生について学んだ。
その後ソウルに移り、韓国の音楽も学ぶために漢陽大学音楽学部国楽科の大学院に通った。教授は在日韓国人の安さんを厳しく指導した。特に韓国語に対しては徹底したという。
「これが一番辛かった。これまで韓国の楽器に触れてきたのに何も知らなかった。韓国伝統文化の奥深さ、味わい深さを知りました。そしてますますパンソリに魅せられていきました」
山にこもり猛烈な特訓
そして、重要無形文化財第5号パンソリ「水宮歌」保有者候補の南海星さんと出会うことになる。パンソリの稽古は毎年夏に智異山や雲峰などで行われる合宿「山工夫」に参加した。
「最初は師匠が弟子に口伝えで指導していくだけです。テープに録音して何度も復習を重ね、山に入って一人で練習を積みました。気の遠くなるような練習でした」。そして何度も声をからしては練習を続け、腹から絞り出すようなパンソリ特有の声を得た。当時、安さんが作ったという練習ノートには、リズムや音の取り方が詳細に書かれている。安さんの宝物だ。
02年には漢陽大学音楽学部国楽科修士課程を修了。現在、日本でパンソリの指導にあたる在日として注目を集めている。
安さんは文化教室でパンソリ、民謡、チャングの指導にあたるほか、マダン劇に参加して後進の育成にも力を注ぎ、大阪の大学で韓国語の非常勤講師を務めるなど多忙な日々を送る。
「韓国の大学ではいろいろなことを学びました。今度は在日の子弟たちに韓国伝統文化の歴史も教えていきたい」と目を輝かせる。
文化教室の問い合わせはこりあ企画(℡06・6758・5112)安聖民。
(2007.11.7 民団新聞)