掲載日 : [2007-11-08] 照会数 : 4677
経済協力の観点から見た南北首脳会談の成果
<寄稿>梁文洙慶南大北韓大学院教授
善循環構造を創出
履行へ国民の支持緊要
包括的な合意
個人的には今回の南北首脳会談に対する感慨で一杯だ。会談最終日の10月4日には午前11時から午後9時まで、某放送局のスタジオで首脳会談の解説をしていた。正午少し前から、1時に合意文の署名式があるだろうとの消息とともに合意文の内容に関する話がひとつずつ入り始めた。
真っ先に入ってきたのが西海平和協力特別地帯だった。以後、 山‐鳳東間貨物鉄道の開通、終戦宣言のための関連国会議等々、大きなものが次から次へと続いた。思わずわが耳を疑った。当初の予想をはるかに上回る合意であり、大成功だった。
今回の首脳会談は2000年の首脳会談の時とは比較にならないほど多くの内容を盛り込んでいた。特に合意の内容が包括的で、同時に極めて具体的、実質的である。このため合意の実行力、拘束力に対する期待感を生むに十分であった。
今回の首脳会談は、南北経済協力の量的拡大、質的深化の契機になる可能性が非常に大きい。経済協力の対象、範囲が拡大され、経済協力の水準が高まるだろう。経済協力のアップグレイドだけでなく、一層の跳躍の足場を作るものである。
まず目につくのが平和と経済の善循環構造の創出だ。経済協力を通じ平和をもたらし、平和が再び経済協力を促進するという構造である。これは経済協力の立場からみると、平和と経済の結合による経済協力のアップグレイドないしは平和の進展によって後押しされる経済協力の跳躍を意味する。
北軍部の同意
事実、今回の宣言で核心的なものは西海平和協力特別地帯の創設だ。このような協力の必要性は平和と経済の両側面から提起される。つまり平和は西海岸地域の平和という、平和自体の必要性であり、経済協力は経済協力の停滞性を脱皮するための軍事的保障措置の必要性だ。
振り返ってみると漢江河口骨材採取、臨津江水害防止、南北水産業協力、京義線鉄道連結などの事業が、これまで当局間会談で何度も合意を見たにもかかわらず、実質的進展がなかったのは、まさに軍事的保障問題が障害となっていたためだ。その障害を、今回除去したのだ。
平和と経済の善循環構造と関連して、もう一つ注目すべきことは、南北の鉄道、道路連結および共同利用だ。開城工業団地用 山‐鳳東間鉄道貨物輸送、開城‐新義州鉄道および開城‐平壌高速道路の共同利用問題であるが、これは軍部の同意がなければ実現不可能な問題であることを想起する必要がある。南韓では鉄道=経済であるのに、北韓では鉄道=軍事という点を認識しなければならない。
空間的に見ると、南北経済協力の拠点拡大も注目される。一方では点の拡大である。既存の開城に今回西海岸の海州、南浦、東海岸の安辺、そして白頭山が追加された。もう一方では点が線、面に拡大された。西海と開城、海州、仁川の連係が想定可能となり、これに南浦まで考慮すると、いわゆる西海岸ベルトが形成されるようになった。今や南北経済協力を語るとき、北韓地図がなければ到底説明できない段階に至った。
双生的協力へ
経済協力の性格変化も予告されている。一方的な支援ではなく双生的(win‐win)経済協力が大幅に拡大される。海州工業団地、西海共同漁労、漢江骨材採取、造船業協力、開城工業団地第2段階、京義線鉄道および平壌‐開城高速道路共同利用の話に、多くの韓国の企業は「干天の慈雨」という反応を示した。
政府次元ないし官民協力の公的協力だけでなく、純粋民間次元の協力も多数含まれていることが今回の宣言の特徴であり、これは2000年南北首脳会談と顕著に区別されるポイントだ。
もちろん、今回の合意は完璧なものではない。物足りない部門も明らかに存在する。われわれの前に置かれた課題も少なくない。また、合意は合意にすぎない。履行の問題はまた別世界だ。しかも来年初めに新しい政府の出帆を控えている。
今回の会談の合意が次の政府でも引き継がれるためには、なによりも国民の支持が緊要だ。国内だけでなく海外にいる同胞たちの積極的支持と声援を期待するしだいです。
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寄稿者略歴
東京大学博士。開城工団発展研究会代表。統一部政策諮問委員。
(2007.11.7 民団新聞)