掲載日 : [2007-11-08] 照会数 : 14369
「参政権」獲得運動の歩み
[ 日本国会には、現在6回目となる地方選挙権付与法案が提出されている。 ]
地域住民としての権利求めて
過半数自治体が賛同
最高裁「合憲判断」追い風に 早期実現へ全力投球
民団を中心とした永住外国人地方参政権獲得運動の結果、日本国会には現在6回目となる、永住外国人への地方選挙権付与に関する法案が提出されており、早期成立が切望されている。民団の地方参政権獲得運動は、1987年の「在日韓国人の権益に関する全国統一要望」(第6次)で地方自治体選挙等への参加要求から始まり、すでに20年にもなる。
世論喚起にも力注ぐ
多文化共生社会推進の鍵に
■94年から本格化
地方参政権獲得運動は、それまでの①行政差別撤廃運動(社会保障など福祉政策における差別撤廃)②指紋押なつ制度撤廃(法的地位の確立)③生活権拡充運動(国籍条項の撤廃)など一連の「権益擁護運動」を通じ推進してきた諸般の差別撤廃運動の延長上にあり、地域住民として地方自治に参与できる「住民権」の保障を目標としたものだ。
88年3月の第38回定期中央委員会で、地方自治体参政権を獲得していくことを決議し、在日韓国人3世以降の法的地位および処遇などを取り決める韓日間「91年問題」協議時にも韓国政府を通じ問題を提起。91年1月の韓日外相覚書の合意で「在日韓国人の地方自治体選挙権について韓国政府より要望が表明された」と明記された。
92年3月の第42回定期中央委員会では生活権拡充運動の最大目標として地方参政権問題を打ち出した。同胞たちの強い働きかけに応じ93年9月には大阪府岸和田市の市議会が、地方自治体で初めて定住外国人への地方参政権付与を日本政府に求める意見書を採択した。
翌94年4月の第44回定期中央大会で①地方参政権の獲得を権益擁護運動の総括として推進することを確認し②地方議会での意見書採択要望活動を本格的に展開することを決議した。また、規約改正により民団の名称・綱領・規約から「居留」を削除し、同胞の日本定住姿勢を明確にした。
同大会を契機に地方参政権獲得を当面の最優先事業と位置づけ、意見書採択とあわせて日本国会での法制化に本格的に着手した。
この年(94年)の10月、福井地方裁判所が「選挙権保障は日本国民に限定されているが、市町村次元の定住外国人の選挙権は憲法の許容範囲内にある」と明示した。さらに翌95年2月には最高裁判所が、「定住外国人に地方選挙における選挙権を法律で付与することは憲法に違反しない」とする憲法判断を下した。
最高裁判決によって、永住外国人への地方参政権付与についての違憲論争に終止符が打たれ、国会で立法措置を講ずるかどうかの問題となった。民団は、同判決の翌月(95年3月)に開かれた第46回定期中央委員会で地方参政権獲得運動に全力投球することを確認した。
94年3月の時点では36カ所にすぎなかった地方自治体の意見書採択が、95年には396カ所に、そして96年3月の第47回定期中央委員会の時には1134カ所となり1000を突破した。
■ねばり強く前進
97年6月から「在日和合・参政権獲得120日間運動」を展開し、98年に入って日本国会法案提出・立法化促進運動を推進した。最高裁判決と地方自治体での意見書採択の拡大に後押しされた民団の活動結果、同年10月に「地方選挙権法案(永住外国人に対する地方公共団体の議会および長の選挙権付与に関する法律案)」(民主党および公明党)が初めて国会に提出された。
さらに99年5月に各政党・国会・友好団体への全国統一要望活動を実施。この年の10月の自民、自由、公明3党による連立政権合意で、地方選挙権付与について「法案を3党で提出して成立させる」ことを表明した。これにより、地方選挙権付与に自民党をはじめとする全政党が賛同したことになる。
地方参政権の早期実現をめざして2000年10月に衆・参全国会議員への全国統一要望活動を展開。01年6月に東京・日比谷野外音楽堂で「永住外国人に地方参政権を!6・5全国決起大会」を開き、参加した4000人が国会請願と街頭示威を行った。
以後も、各党および国会議員に対して地方選挙権法案の早期成立を促す要望活動を粘り強く展開してきた。03年3月の第56回定期中央委で最重点事業として継続推進を確認。05年3月には「地方参政権容認 最高裁判断10周年記念集会」を全国地方別に開催。「定住外国人の地方参政権を実現させる日・韓・在日ネットワーク」によるシンポジウムなど、市民団体との共同集会と世論喚起にも力を注いでいる。
外国籍住民の権利を認めるのが時代の趨勢にもかかわらず、地方選挙権付与法案は保守勢力の頑なな壁に阻まれ、これまで継続審議のまま棚上げ状態にある。
だが、地方参政権付与に賛同する意見書を採択した自治体は今年9月1日現在、1882全自治体中971(全国的な市町村合併後の数)を数え、採択率は約52%に達している。また、市町村合併等を契機に永住外国人に「住民投票権」を付与する条例を制定した自治体も201にのぼる。
このように、地方参政権獲得運動の成果として、すでに多くの自治体が、永住外国人を同じ「住民」として認めている。複数の全国紙による世論調査でも日本国民の約60%が地方参政権付与に賛成しており、反対は25〜30%だった。
日本での運動に刺激され韓国が05年に、アジアでは初めて永住外国人に地方選挙権を付与したことも特記されてよいだろう。こうした中で、「住民権」保障と共生社会の実現をめざし、地方参政権の早期付与を、日本国民にあらためてアピールするため「11・7全国決起大会」の開催となった。
(2007.11.7 民団新聞)