掲載日 : [2007-11-08] 照会数 : 7731
発想の転換で特許スピーカー 在日3世が開発
[ 裴善会長に「テナム」開発の成功を報告する開発者の申鐘栄さん(左) ]
在日資本の韓国音響社 自社ブランド1号
在日同胞資本の韓国音響株式会社(ソウル市、裴善代表取締役会長)が開発したスピーカーシステムが、内外で静かな反響を呼んでいる。キャビネットにはベトナム伝統の竹工芸品を使った。キャビネット自体が振動板として機能することで、原音に限りなく忠実な再生を可能にしたという。在日3世社員が中心となって担い、製品化に成功した。韓国音響としては73年の創立以来初となる自社ブランドだ。
商品名は「テナム」。円形状の楽器を思わせるキャビネットがユニークだ。開発時の着想も従来のスピーカーシステムとはまったく逆を行った。通常はできるかぎりキャビネットが振動しないよう設計されるのに対して、「テナム」はキャビネットそのものを振動させる。「教科書とは逆のことをやった」ことが認められ、韓国で特許を得た。ユニットは韓国音響の34年のオーディオ技術に裏付けられている。
開発したのは韓国音響社の3つの研究チームの一つでチーム長を担う申鐘栄さん。裴会長とは姻戚関係にある。入社当時は「縁故採用」と陰口をたたかれ、さらに言葉の不自由もあって社内では浮いた存在だった。まして、工学的な知識があったわけではなく、スピーカーの基本的な構造から勉強した。
開発にあたって理想としたのは、よけいなものを極力はぶいたシンプルさと、自然の素材を活かすこと。ある日、ソウル市内でベトナム産の竹を素材としたお椀を見つけた。申さんはこのお椀を2つ組み合わせて球形スピーカーを作ってみようかと思いついた。
竹は繊維質で柔軟性に富み、不要な共振を吸収してくれる。その足で駐韓ベトナム大使館に出向き、メーカー名を聞き出すと、現地で直接交渉した。5社のうち1社だけが申さんの話に耳を傾けてくれ、キャビネットの素材となる竹を薄くなめしてくれた。
「テナム」の韓国での評判は上々だった。ある声楽家は「大 の音が天に昇っている」と感想を語ったという。マニア向けに手作りの高級スピーカを製造している秋葉原の小泉無線に持ち込んだところ、やはり好感触を得た。確かな手応えをつかんだ申さんは日本で販売代理店をつくり、自ら代表に収まった。大手の量販店に卸せば販路は広がるが、韓国音響のブランド名が維持される保障はないためだ。申さんは「テナム」を実際に視聴してもらい、評価してくれる人だけに売りたいと話している。
「テナム」はすべて手作り。アンプ内蔵で販売価格は1セット10万円。問い合わせと試聴は(℡047・426・0108)ファオン株式会社。
(2007.11.7 民団新聞)