掲載日 : [2007-09-26] 照会数 : 5585
同胞高齢者無年金訴訟 福岡でも
[ 「決起集会」で基調講演する田中宏さん(右) ]
経過措置の不備問う
政治決着へ支援会結成
【福岡】国民年金制度から国籍要件が撤廃されたいまも経過措置が不十分なため、今日まで無年金状態に置かれている福岡県内の在日同胞高齢者9人が18日、福岡地裁に国家賠償請求訴訟を起こした。在日無年金高齢者が日本政府の責任を問うのは大阪、京都に続いてこれが3例目。地元では民団と総連の有志も加わり「在日コリアン無年金福岡裁判を支援する会」を発足させた。
大阪、京都に続く
原告団の年齢は75〜86歳まで。このうち、86年のカラ期間導入時、すでに60歳以上になっていた「制度的無年金者」が3人。残る6人はカラ期間を利用して国民年金に入ることは可能だったものの、受給できる年金額は満額の数分の1〜数百分の1のみ。
そもそも、原告団の多くはカラ期間の存在そのものを知らされていなかったため、わずかな年金を受け取る機会も逸したのだという。このため、原告らの多くはわずかな預金を取り崩すか、子どもたちからの仕送りに頼っているのが現状だ。
弁護団は訴状で、国民年金制度発足時の国籍要件を憲法14条1項に反する違憲な立法と指摘。さらに、国籍要件撤廃後も何らかの経過措置・救済措置を採らなかったことと併せ、いずれも国家賠償法上の違法行為にあたるとして原告1人当たり1500万円の損害賠償を求めている。
裁判を提起した「在日コリアン無年金裁判を支援する会」(荒木裕子代表)は筑紫野、小郡、久留米、八女、大牟田の5地区から有志が加わり、昨年9月に正式発足した。副代表は民団久留米支部の林命祚支団長、総連福岡支部からも辛正寿氏が加わった。このほか委員には民団の福岡・筑紫・大牟田の各支部役員、総連からは筑後支部役員らが個人の資格で名前を連ねている。
荒木代表は「非常に難しい裁判」と認めたうえで、裁判闘争とは別に政治解決を求めて世論喚起に力を入れていきたいと話す。いずれ原告団がそろえば、第2次訴訟も起こしていく考えだ。
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決起集会に150人 民団役員が激励
「在日コリアン無年金裁判を支援する会」は提訴に先立って17日、福岡市内の都久志会館で「決起集会」を開いた。会場は市民と関係者150人でほぼ満席となった。
基調講演に立った龍谷大学教授の田中宏さんは、韓国政府の働きかけによる政治解決への期待を語った。民団福岡県本部からは宋日柱副団長が出席、「傍聴席をいっぱいにするため、一緒に頑張っていきたい」と決意と激励の言葉を述べた。
(2007.9.26 民団新聞)