掲載日 : [2004-06-30] 照会数 : 8252
<Special Wide>七夕を前に考える②今も正確、朝鮮時代の日時計
[ 日時計に感嘆する見学者たち ]
<Special Wide>七夕を前に考える 暦と時の韓日交流③
今も正確…朝鮮時代の日時計
山口・萩市の金優さんが複製、一般に公開中
時間と節気が一目で
「仰釜日晷」韓文化のモニュメントに
「仰釜日晷」とは
朝鮮朝の世宗時代(1418〜50)につくられた精巧な日時計「仰釜日 (ぎょうふにっき)」が日本にも存在し、見学する人たちに驚きの声をあげさせている。設置場所は、萩市椿東笹山の中腹(海抜44㍍)の北緯34度30分、東経131度23分。
「仰釜日晷」とは、韓国で玉石と呼ばれ、熱膨張係数が極めて小さい黒御影石でつくられた半球形の日時計で、350年前まで宮廷の内外で公衆用として実際に使われてきたものだ。「仰釜」は底のくぼんだ釜が天空を仰いでいる形を指し、「日晷」は太陽の影、つまり日時計の意味をもつ。
これを同市在住の2世、金優さん(57)が複製した。10数年来の夢をサッカーの韓日ワールドカップ共催を契機にかなえたという。同胞過疎地域であるうえに、近代への黎明期から韓国とは何かと因縁のある萩市で、ポン酢・地ビール製造会社「柚子屋本店」を本名で営む金さんには、格別な思いがある。
「在日として事業をやらせていただいている。韓国の伝統文化や技術を折に触れ、自然なかたちで日本に紹介できたらいいと考えてきた」。
2年前に新社屋を建設するにあたって、敷地内にそんな願いを託せるモニュメントが欲しかった。迷うことなく選んだのが、科学・文化が一挙に花開いた朝鮮朝ルネッサンス期の一つの象徴であり、自身がほれ込んできた「仰釜日晷」だった。
本体は高さ52センチ、1㍍22㌢四方で、4足の台座の高さは40㌢ある。もちろん、単なるモニュメントではない。季節・時刻の正確を期すために、設置に際しても緯度と経度を合わせる専門的な知識を要した。
「ものすごく正確」
石盤を半球形にくり抜き、その内面に時刻線が定時法に基づいて12支の縦線で刻まれている。1日は12時間96刻法によっており、現代の時間では日時計の1時(いちどき)が2時間で、1刻が15分に相当する。時刻線に直交する13本の横線は24節気線(季節線)だ。北極を指すノーモン(影針)が移動する太陽を投影し、その目盛りから時間と季節を測定する。
日本で見ることのできる唯一の韓国日時計に、金さんは地元の名をとって「笹山日時計」と名づけた。「柚子屋本店」はいわば地場産業だ。中学生や各団体の子どもたちが工場見学に訪れると、日時計にも自ずと関心を向ける。自分の腕時計と見比べながら「ものすごく正確だ」と驚く。
金さんは「時間の原点、影が時を刻む日時計」と題した、構造と原理を細密に分りやすく解説したパンフも発行し、時によっては自ら解説する。
金さんの日時計との出会いは、自身が所属している萩市ロータリークラブの訪韓がきっかけだった。同クラブは、韓国・利川市のロータリークラブと姉妹提携しており、10数年前からたびたび訪韓している。金さんはそのつど世宗大王陵に立ち寄り、日時計に感銘を新たにし、いつか日本に紹介したとの思いを募らせてきた。
複製に当たっては、利川ロータリークラブの複数の友人が、学者の手配や現場作業の指揮など全面的に協力してくれた。2㍍角の石の切り出しだけでも、割れ目がないか精査するため、2カ月かかったという。
金さんの韓国文化紹介は、日時計だけにとどまらない。20年前に萩市日韓親善協会の設立に参加、現在も副会長を務めており、7月3日には韓国映画祭を、11月14日には韓国古典舞踊の鑑賞会を開催する。
(2004.6.30 民団新聞)